蛍鑑賞の帰りは土方さんが家まで送ってくれた。
「今日はお誘い有難うございました」
「こっちこそ楽しい時間が過ごせた。有難う」
私は別れるのが名残惜しく感じていた。
(って何?私なんだか土方さんのことめっちゃ意識してない?)
何時もの『また誘ってください』と言う社交辞令が、喉につっかえて出てこない。
何故かは薄々わかっている。
それは社交辞令じゃなくて…自分の本心だからだ。
上手く言葉を発することが出来ずモジモジする私に、土方さんは優しく頭をポンポンと叩いた。
「早く総司と仲直りしろよ」
「はっ!そうでした!」
出がけに総司と揉めた事を思い出し、私は真っ青になった。
オロオロとしていると玄関が開き、おにぃが顔を出した。
「雛、帰ったのか?土方さんわりぃな、雛のお守りしてもらってよ」
「クククッ…何時までも子供扱いだな。左之、遅くまで連れ回してわるかったな。ほら、兄さんの出迎えだ」
「あっあの」
「ん?」
「…また誘ってください」
振り絞るように言葉を発し、私は慌てて家に入った。
赤く染まった顔を見られないように。
リビングには新聞を読む総司がいた。
「ただいま」
総司の肩がピクリと動いた。
「総司…」
「蛍どうだった?」
総司は何事もなかったような顔を私に向けた。
「綺麗だったよ」
私はスマホを取り出し、総司に画面を向けた。
「全然上手く写せなかったけど。画面の中にチラチラ小さな光が動いているのわかる?それが蛍だよ」
「全然見えない」
「めっちゃ目凝らして見て!」
「無茶言うなぁ」
何事も無かったように、私と総司は笑いあった。
「…雛」
「ん?」
「手首…痛くない?」
「大丈夫だよ」
「ごめん」
「私もごめん」
総司は私の髪をクシャクシャと撫でた。
これは昔からの総司の癖。
おそらく喧嘩した後の仲直りの意味なのだと思う。
「ふふっ…」
「何?」
「んー。総司の妹で良かったって思ったの」
「何時も『バカ総司』って文句言ってるのに?」
「何時もじゃないし!」
結局何時もの私と総司の小競り合いが始まる。
「お前ら仲直りしたか?…ったく、毎日毎日、いい年して兄妹喧嘩なんかするなよ」
そしておにぃが呆れた声で窘める。
何時もと同じ日常。
そんな中で生まれた、私の心の変化。