コロナ禍の中マスク着用は当たり前、県外に出るのは悪いことの様に感じる毎日。

恋人達のデートのあり方も変わりつあるのだろうか。

私は白鳥路公園※1の入口付近で、一向に来ない恋人を待っていた。

(せっかくの丸一日デートなのに、行くところがめちゃ地元って。観光客でもないのに兼六園や城主公園ってどうよ?)

イライラが募る中、待ち人はゴメンゴメンと頭を下げながら現れた。

「遅い!」

「すまない。バスが混んでてさぁ」

車で来ない辺り、もはや遠方に出向く気はまったく無いのだろう。

「じゃあ兼六園から回ろう」

「兼六園回るなら、21美※2で待ち合わせすれば良かったのに。中でお茶飲みながら」

「なんだ、その様子じゃあ全然気がついてないな」

「なにが?」
 
彼は私の手を取りニコリと笑った。

「さぁお姫様、向かいますか」

私は不機嫌な顔のまま彼の手を取った。

不貞腐れながら俯き歩く私に、彼は「もっとちゃんと前を見て」と言った。

私はしぶしぶ顔を上げた。


「あっ!桜!」

「桜のゲートみたいだろ?」

「凄い…」

「これ見せてやりたくて」

「それで待ち合わせ場所をここにしたの?」

「まぁな」

私達は満開の桜のゲートをくぐりながら、兼六園へと向かった。

「ジモティーが観光ルート回るのも悪くないね」

「だろ」

もう私の不機嫌は修まって、気分は上々にだった。





※1  白鳥路公園  金沢城裏手にある小公園。文学の道を抜けると兼六園前に出る
※2  21世紀美術館 斜めに横断歩道を渡ると兼六園の真弓坂口の受付がある