私は梅干しが大の苦手だった。

コンビニおにぎりの中に梅干しおにぎりがあるのが理解出来なかったし、梅干しに比べたら鮭や焼きたらこの方が数千倍美味しいと思っていた。 

あの日までは。





それは明日のプレゼンの準備をしていた日のことだった。

「おーい、飯買ってきたどー」

主任がコンビニの袋を持ち上げて見せると、皆は蟻が集るように主任を取り囲んだ。

「良い大人が群がるんじゃねぇ!良いか?一人二個までだぞ。苦労してコンビニはしごして回ったんだからな」

「主任好きー」

「俺も好きー」

「野郎が好きーとか言うんじゃねぇ!」

ワイワイと盛り上がる人達を一瞥し、私はパソコンへと視線を戻した。

おにぎりのラップを破る音とキーボードを叩く音が部屋に響く。

「高柳さん、好きなおにぎりなくなっちゃうよ。取らないの?」

同期の澤田が声をかけてきた。

「あっ…私は皆が選び終えてからで大丈夫です」

「高柳さん堅いなぁ(笑)同期だしタメ口で良いのに」  

「はぁ…」

(貴方を前にすると緊張して、タメ口なんて叩けないんです)

私はため息のような相槌のような曖昧な言葉を洩らした。

「行こう、おにぎり無くなっちゃうよ」

澤田はマウスを握りしめていた私の右手を取り、テーブルへと誘導した。

(ヤバイって…私めちゃ顔赤いし。誰かに見られたら変な噂になっちゃう)

澤田は私の気持ちなど気づくわけもなく、ズンズンとテーブルへと歩いていく。

「あっ…ひでぇなぁ。おにぎり二個しか残ってねぇ」

テーブルの上にはおにぎり界の『ザ・地味ーズ』と言えるような、昆布おにぎりと梅干しおにぎりしか無かった。
 
(マジ?なんで梅干しとか昆布とか、年寄りくさいおにぎり買ってくるわけ?)

「高柳さん好き嫌いある?」

「えっ…あの…私はなんでも…」

と呟くものの、昆布と梅干しだったら昆布のひとり勝ちだ。

「じゃあ昆布貰っていい?俺梅干し苦手でさ…」

「あっうん、大丈夫。私、梅干し平気だから」

「サンキュ」

澤田は梅干しおにぎりを私の手に乗せた。

「俺、昆布大好物なんだよなー。残っててラッキー」

「そっ…そうなんだ。私も…梅干し大好きで…超ラッキー」

それは梅干しおにぎりが私の中で特別になった瞬間だった。










最近あるお店の梅干しおにぎりにハマっています。

もともと梅干しは苦手ではありません。

肉だんごと食べるからさっぱりした梅が良いだろうと選んだら…

(゚д゚)ウ-(゚Д゚)マー(゚A゚)イ-…ヽ(゚∀゚)ノ…ゾォォォォォ!!

ご飯の塩加減も絶妙で、めちゃくちゃ美味しかったです。