卒業証書の授与も終わり、お決まりの仰げば尊しも歌い終わり、皆泣いたり叫んだりで大忙しだ。

私は平静を装いながらも、心の中は焦りを感じていた。

(居ない…)

友達ですらない彼と会えるのは今日が最後。

ひた隠し続けた気持ちを伝えようと決めたのに、肝心の彼が見つからない。

(どこにいるの?) 

赤い顔をして声をかけてきた男子に気づかないふりをして、私は校舎裏へと走った。

(居た…)

彼はたくさんの女の子達に囲まれ、困った顔をしながら笑っていた。

彼に告白するなど、身の程知らずだったろうか。

そんな強い後悔が横切る。

彼と目が合った。

女の子達に手を振ったり、頭を下げたりしながら、彼が私へと近づいてきた。

「よぉ…」

「…今日で会えるのも最後だね」

「そうだな…」

「あの…」
「あのな…」

お互い何かを言いかけて口を噤む。

「…」
「…」

(心臓の音だけがうるさい)

「あのな…ライン交換しないか?」

「へっ?」    

「出席番号が近くて、何かと一緒になることが多かったじゃないか。明日から会えるわけじゃないと思ったら…ちょっとさびしぃ…つーか物足りない感じがしてさ」

「…」

「まずは友達から…どうかな?」  

顔が赤くなるのがわかる。

「わっ私…」

「うん…」

「ガラケーだからライン出来ない」

「ガラケー…なの?」

穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった。

「ごめんね」

涙目でそう答えると、彼は赤い顔をしてこう言った。

「じゃあさ、二人でスマホ見に行くってのはどうだ?今日でお別れってのは俺的に嫌なんだけど」