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12月24日。

今日はクリスマス・イブ。

クリスマスムードは最高潮。

二人で歩いている人はもれなくカップルな高確率。

雪がチラチラと降る中、私は一人で街中を歩いていた。

(毎年恒例の事だけど…迷う)

そして今はワクワクな気持ちと焦る気持ちが入れ混じった、非常に複雑な感じで信号待ちをしている。

信号が青になった。

私は考え事をしたまま歩き出した。

カツッ

何かが落ちた音が響き、私はハッとした。

私は誰かにぶつかり、相手の持っていた物を落としてしまったようだ。

「ごっごっごめんなさい」

慌てて横断歩道に落ちた物を拾おうとしゃがみこんだが、ぶつかった相手は無言でそれを素早く拾い上げ、そして私の腕を掴んだ。

(ひいっ!かっかっ絡まれた!?)

そのまま信号機の先まで、引きずられるように渡った。

私は恐怖心にかられながら、全力で謝った。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「すまん、俺がぼんやりしていたのが悪かった。どこか痛くはしていないか?」

何処かで聞いたことのある声だった。

「あ?れ?…えっと?」

「左之助の妹じゃねぇか」

目の前にいるのは、兄達が通う剣道道場で見た土方という男の人だった。

「こんにちは。えっと…落としたもの…大丈夫でしたか?」

土方さんはスマホを一通り触って、コートのポケットの中に押し込んだ。

「あぁ、大丈夫だ。歩きスマホしていた俺が悪かった」

「私も…考えごとしていて、ぼんやりしていたからごめんなさい」

スマホは無事と聞きホっと胸を撫で下ろす。

「今日は一人か?左之や総司と一緒じゃねぇのか?」

「今日はおにぃと総司のクリスマスプレゼントを買いに来たから一人です。それで何を買おうか迷ってて…それでぼんやりしてました」

「相変わらず仲が良いな」

「土方さんこそ一人ですか?」

キョロキョロと周りを見渡すが、側に連れのような人はいない。

「あぁ、俺は単なる買い物だ。そして連れて回るような相手はいねぇ」

「あはっ一人者同士ですね」

「だな」
 
二人顔を合わせてクスリと笑った。

「此処で会ったのも何かの縁だな。何処かでお茶でもするか?ついでに左之と総司のクリスマスプレゼントの相談にも乗ってやろう」

「良いんですか!もう毎年毎年の事だからいい加減ネタ切れで…むっちゃ助かります!」





私達はゆったりとした空間のコーヒーショップへと移動した。

熱いカフェ・オ・レを一口飲むと、体があたたかくなってホッとする。

「クリスマスも三人で過ごすのか?」

「はい。毎年恒例なんです。クリスマスが近づくと総司が必ず風邪をひくから。そしたらおにぃがデートの約束をドタキャンして彼女さんに怒られて…を毎年繰り返し。私一人で看病出来るから大丈夫って言っても、風邪が移るから一人に出来ないって言い張って。そして総司は今年も風邪っぴきです」

「ククッ…相当なシスコンだな。左之助も総司も」

「おにぃは甘やかし過ぎだなーってたまに思うけど、総司はどうかなー。気に入らないと嫌がらせするし」

ふぅとため息が漏れる。

「総司はガキだからな」

「ほんとそうですよ。言い合いで負けそうになったら直ぐにほっぺた抓るんですよ。酷くないですか?」

隣で土方さんはひたすら笑いを堪えている。

「…土方さん笑い上戸ですね」

「俺がか?」

土方さんはまさかといった顔で私を見た。

「だって初めて会った時も笑ってたし…ハムスターに似てるとか言って」

「事実似てるだろ?」

「似てません」

「似てる…小さくて可愛い。あってるじゃねぇか」

「へっ?」

可愛いと言われ、急に恥ずかしくなり顔が熱くなってきた。

「左之も総司も自慢していた。可愛い妹がいると。だが皆が見たい、連れてこいって言ったら『悪い虫がつくから駄目だ』の一点張りでな。だから道場に来た時は驚いた。あんなに渋っていたのになって」

「あっ…あの日はおにぃが…ご飯連れてってやるから来いって言ったから」

私から行きたいと言ったことはない。

人の集まる場での社交辞令的な雰囲気が嫌で、愛想笑いしなくてはいけないのが苦痛だったから。

「ふっ…飯につられたか」

そう言って土方さんはまた笑った。

(桜…桜の花が咲いたみたい…)

私はぼんやりと春に咲く桜を思い出していた。