🐣 基本設定 🐣
おにぃに頭を軽く小突かれた私は、心の中で唸っていた。
(なんかモヤモヤする…)
それは近藤さんと土方さんの撃ち合いを見ていた総司が「土方さんズルいですよ」と参戦し始め、すぐに帰れなくなったから…に違いない。
それともう一つ。
「おにぃ…総司って他人にもあんな嬉しそうな顔するんだね」
他人と一緒に居る総司は何時もつまらなさそな、人を小馬鹿にした顔をしていた。
だから初めて見る総司の姿に、私は驚いていた。
「そうか…雛は初めて見たか。近藤さんの前ではな、何時もあんな感じたぞ。」
「そうなんだ…」
全然知らなかった兄の顔。
「ちょっと妬けるよ」
「近藤さんにか?」
「ううん。土方さんに」
「ははっ!土方さんにかよ」
きっとあの人は総司のそんな姿を何度も見ている。
私の知らない総司の姿を。
じっと見ていると、竹刀を肩に担いだ土方さんが近づいてきた。
「ククッ…大事な兄さん取られたって顔してやがる」
「なっ!」
違うと反論しようとらしたが、図星だからしょうがない。
「…あんな総司の顔見たことなかったし」
ふてくされる私を見て、土方さんは笑いながら頭をポンポンと軽く叩いた。
「お前らは羨ましいくらい兄妹仲いいな」
「羨ましいですか?」
「あぁ。俺には姉がいるが口煩いだけだ」
「お姉さんと仲悪いんですか?」
「年が離れているからな…姉と言うより親代わりみたいな感じだ」
「ふふっ、お姉さん美人そう」
「怒ったらまるっきり鬼だぞ」
「ひっどーい」
気がつけば私は声をあげて笑っていた。
前回感じた不快感など何処かに行ってしまったようだ。
「雛、ずいぶん土方さんと仲良くなったんだね」
総司が私と土方さんとの間に割って入るように現れた。
「あっ…うん…今少しお話してたの」
「ふっ…シスコン総司の登場か」
土方さんの一言で総司の顔つきが変わった。
「土方さん、雛に変なちょっかい出さないでくださいよ」
そう言う総司の目は笑っていない。
怖い総司の降臨である。
「出さねぇよ。総司を敵に回したら生きちゃいねぇ」
「ホントかな?クスッ…土方さんは『バラガキ』だから信用ならないよ」
「バラガキって何?」
土方さんは小さく舌打ちをして「乱暴者って意味だ」と答え、「昔の話だ」と付け加えた。
(乱暴者と言えば…)
「ドラえもんで言うジャイアン的存在…となると総司がスネ夫かなぁ」
とひとりごつ。
「ククッ…やっぱり面白えな」
総司は面白くないといった顔で、笑う土方さんをジロリとひと睨みした。
「今日は総司がうるせぇからここまでだ。またな」
そう言うと土方さんは軽く手を上げ、行ってしまった。
「土方さん、珍しく笑ってたな」
おにぃは何か楽しいのかニヤニヤしながら近寄ってきた。
「えっ?珍しいの?あの人しょっちゅう笑ってんじゃないの?」
「土方さんは『鬼』だからな。笑ってる方が珍しいぞ」
「ふーん…」
「気になるか?」
相変わらずニヤニヤと笑うおにぃ。
「気になりません」
私はちょっと不機嫌そうにそっぽを向いた。
「雛、土方さんが気になるの?」
同じく不機嫌そうな顔の総司言った。
「ならないよ」
「そう?」
「うん」
総司はホッとしたような顔をして、私の肩に顔を埋めた。
(総司…甘えん坊みたい)
「総司は土方さん嫌いなの?」
「んー土方さんズルいから」
「ズルい?」
「近藤さんも雛もなんて…ズルいよ」
私は初めて見る総司の姿に、少し戸惑いを感じていた。