人の通信手段は狼煙から文へ、紙の手紙から電信へと変化し、メールから次第にLINEへと変わって行った。
でもいまだに私の大切な人への連絡はメールが主流だ。
件名:こんばんわ
急に寒くなりました
そろそろ電気毛布の出番かもデス
明日早くに出勤するので、今日は早めに寝ます
お仕事忙しい時間帯ですね
帰りは寒いので、暖かくして帰ってくださいね
おやすみなさい(^^)
送信釦を押してお布団に潜り込む。
そばに置いてある狼を模した人形を抱きしめ、目を閉じた。
愛おしい人を想いながら。
女達の笑い声が響く中、ポケットの中のスマホが静かに鳴った。
(メールか…)
気づかないふりをして、目の前にいる女に相槌を打った。
「あれ?メールじゃない?見なくて良いんですか?クスクス…緊急事態かもよ」
ヘルプに来た男がちゃちゃを入れてくる。
「大切な人からかしら?気になるわ」
女も興味を示し始めた。
「余計なこと言うんじゃねぇ」
「野良猫に捕まって大変〜とか…クスッ…SOSかもね」
「あら、貴方ハムスターでも飼ってるの?」
女の発言につい吹き出しそうになる。
「まぁ…似たようなもんかもしれねぇな」
男も女もメールの送り主と内容に興味深々らしい。
やたらと確認して返信しろと催促する。
「言っとくがメールに緊急性は全くない。言い切っても良い」
「ふふっ…以心伝心なのね。なんだか妬けるわ」
俺は誤魔化すように苦笑いをした。
最後の客を見送りドアを閉じる。
俺は安堵のため息をつきながらスマホを取り出し、メールを確認した。
まだ人のぬくもりが残るソファーに身を沈め、ゆっくりとメールを打つ。
件名:無題
身体が資本だからな、冷やすなよ
明日は…もう今日だな
仕事は早く終わるのか?
だったら晩飯でも食いにいくか?
忙しいようなら予定が無い日を教えろ
休みを合わせる
くれぐれも腹は冷やすなよ
おやすみ
送信釦を押して、スマホを胸に置きそのまま目を瞑った。
胸にある小さな花を想った。
掃除の邪魔だからどけと言われるまで。