幼なじみの陸と二人で近くの公園の蛍鑑賞会に行くのは、物心つく頃からの毎年恒例のイベントだった。
何時も私は蛍を見つけられなくて、陸の指差しと陸の小声を頼りに探していた。
「ほら左側で光ってる」
「陸くすぐったい!」
「大きな声出すなよ」
耳元で囁く陸の息がくすぐったくて、何時も陸に怒られてた。
「吉乃、今年はバカ笑いするなよ」
「陸が耳に息かけなかったら、バカ笑いしないよ」
「ばぁか!喋ってるだけだろが!」
カラコロと下駄の音を鳴らしながら、私達は公園へと向かう。
陸が「あっ」と声を上げ、右手を差し出してきた。
「ほれ!手出せ」
「なんかくれるの?」
「ばぁか!はぐれるだろが!」
「馬鹿って2回も言った!」
「吉乃が馬鹿だから仕方ねぇ」
私はそっと陸の手に自分の手を重ねた。
陸は指を絡めて、ぎゅっと強く握りしめた。
「吉乃…真ん中の下の方、葉の中で光ってるの見えるか?」
ぼそぼそと話す陸の声に、私の全身は甘い痺れを感じていた。
真っ暗で良かったと思った。
私の顔は火を吹いたように、真っ赤になっていたからだ。
「今年は静かだな?」
「騒いだら蛍が逃げちゃうもん」
震える声を抑えるので必死な自分が笑える。
「綺麗だね…命の光だ」
「吉乃…」
「なに?」
「来年も来ような」
「うん」
「再来年も、そのまた次も」
「うん…おばぁちゃんになっても誘ってくれる?」
「吉乃以外、誰も誘わねぇよ」
「私も陸以外の人とは来ない」
今年は何時もとはちょっと違う。
二人だけの約束をした。
絶対に忘れない…大切な約束を。