ドーン
ドーン
仕事帰り、花火の上がる音が聞こえている。
胸がきゅっと傷んだ。
あの日貴方と見た花火を、私は今も忘れてはいない。
人混み中で『はぐれるから』と手を強く握られたこと。
見上げた貴方は、耳まで真っ赤にしていたこと。
『上がるよ』と空を指差す貴方の横顔を、私はそっと見つめていたこと。
火薬のニオイが立ち込める中で余韻に浸る私に、初めてキスをしてくれたこと。
お別れの時に『今日は帰りたくないね』と言い合って、お互い笑ったこと。
今年は誰と見てるのだろう。
きっと私が知らない誰かが隣にいるね。
「なーんてね。感傷に浸るなんてらしくないことしちゃってる。」
私は自転車を漕ぐスピードを上げた。
今年は誰と見に行こう。
浴衣を着て行こうかな。
そこにロマンスがないとしても、新しい一歩を踏み出してみよう。
今日は花火の日。
1733年(享保18年)に両国川開きで、初めて花火が打ち上げられたそうです。
この川開きは八代目将軍徳川吉宗が行ったのが最初で、慰霊や悪霊退散の意味を込めたものだそうです。