月を見上げる度に思う

まだ生きている

まだ生かされている

その中に意味を見出そうとしてみたが、何も見つからなかった

それを模索する俺に大鳥は『土方君、君は滅びの美学を気取っているのか』と言った

俺を詰るように吐き出した言葉が、俺の心にコトンと落ちた

「滅びの美学ね…」

「…何が可笑しい?」

「はん?」

「君は僕の言葉を聞いて笑っているじゃないか!」

笑うに決まっているだろう

「ありがとな」  

「なんだい…急に」

「おかげさんで腹が決まった」

「はっ?」

「別に知る必要もない事さ」

終焉の地に辿り着いた

あとはその時を迎えるだけだ

馬鹿にされたと思ったのだろう、大鳥は肩を震わせ退出した

そんな大鳥を見送った俺は、机から紙と筆を取り出し、窓辺に寄った



鉾とりて月見るごとにおもふ哉あすはかばねの上に照かと



直に俺はこの身に曼珠沙華を咲かせるだろう