風邪をひいた。

口の中がやたらと渇いて仕方がない。

喉越しの良いものを食べたくて、僕は冷えたゼリーを口にした。

(不味い…)

熱で舌が麻痺しているからか、人口的な甘みのせいなのか、甘さがほとんど感じられない。

それでも喉に伝わる冷たさが欲しくて、僕は器の中のものすべてを口にした。

(水分が欲しいな…)

冷蔵庫の中を漁ると、少々萎びかけている檸檬が目に入った。

檸檬と言っても従来の酸っぱい檸檬ではなく、スイートレモネードと呼ばれるオレンジとの交配種で生まれた果物だ。

オレンジを食べるようにくし型に切って、ガブリとかぶりついた。

ほどよい酸味と甘みが舌を刺激し、みずみずしい果汁が喉を伝わる。

(美味しい…)

カジカジと貪るように檸檬にかぶりついては、檸檬の残骸を放り投げる。

屍のような檸檬に相反するように、僕の身体は満たされていく。

あまい檸檬。

まるで君の言葉のように、僕の身体に沁みていく。