「梅の花…咲く…っくそ!」

苛立ちのあまりに筆を投げても、いい言葉が思いつくわけでもねぇ。

俺は部屋の隅に転がった筆を手に取り、大きなため息を一つついて文机に向かった。

「くそっ!総司のやつ。『土方さんの読む歌は素直過ぎるんですよ。いつもいつもひねりがないな~』だと…。感じた事を素直に言葉にして何が悪い!俺はおめぇに読ませるために詠んでんじゃねぇよ!」

拳を文机に叩きつけると、机の上に飾られていた梅の花がはらりはらりと舞い散った。

「…悪い…悪かった。俺が腹を立てているせいで、お前さんの命を奪っちまったな…」

元に戻るわけでもないとわかっているのに、俺は手でそっと小さな花弁を寄せ集めた。

「それともなんだ…ここで散るのがお前さんの命運だったとでも言うか?ふん…ずいぶんと潔いんだな」

梅の花は自分が花を咲かせる時期を知っている。

だが、散る時期までは知る由もない。

もっと長く、もっと美しく咲いていたいと願っても、誰かの力が加われば簡単に終焉の時を迎える。

それでも後悔はないのだろう。

最後があるから今を生き、最期があるからこそ今が輝くのだから。

「潔く咲き、潔く散る…か。俺も…かくありたい」

少し考えて…筆を持ち直し、頭に浮かんだ言葉を形にしていく。

「梅の花…咲る日…だけに…さくと…いや…さいて…」

書きあがった句を、先に書き溜めて置いた句の一番最後に重ね、あらかじめ用意しておいた表紙で挟んで、丁寧に紐を通していく。

出来上がった句集をぱらぱらと眺め、最後の句を確認して俺は立ち上がった。


梅の花 咲ける日だけに さいて散る



「さてとっ…俺も咲かせるとするか。夢って名の花をよ!」










文久三年二月

浪士組は江戸幕府将軍家茂上洛の警護のため上洛

浪士組は壬生浪士組と名を変え、やがて会津藩より『新選組』の名を賜る事となる

そして新選組は動乱の世を駆け抜け、やがて散って行く

咲ける時輝き 咲き誇って散る 淡い雪のような花のように