ブログネタ:去年の今ごろ、なにしてた? 参加中本文はここから
SSです。
以前書いた新選組のSSシリーズです。
低クオリティ、かなり稚拙な読み物です。
興味のない方はここでお引取りください。
寒さで手が悴んでいる。
吐く息は白く立ち上る。
僕は盆に乗せた味噌汁が冷めないうちにと、急ぎ足であの人の部屋へと向かっていた。
ドアを軽くノックをすると、誰だと不機嫌な声が聞こえた。
(よかった、部屋にいる。あたたかい内に召し上がってもらおう)
緊張で震えそうな声を抑えつつ、僕は大きな声で名を名乗った。
返事を確認してから僕は静かに部屋へと足を踏み入れる。
不機嫌な声から一転して、土方さんは優しい笑顔で僕を出迎えてくれた。
食事を置くために、机の上を軽く整理した。
(山済みの書類がこんなにも…)
この人はいったいいつ眠っているのだろうか。
寝不足だとぼやく事もなく、仕事が辛いと誰かに愚痴を言うわけでもない。
食事だって、こうやって部屋に持ってこなければ、一日でも二日でも飲まず食わずで過ごしてしまうに違いない。
「毎日毎日気使わせて悪いな」
「いえ、土方さんを気遣い、お世話をする事が小姓である僕の仕事ですから」
(ほっ褒められた…土方さんに褒められた!)
高揚していくのがわかる。
顔も体も熱くなっていく。
この勢いで五稜郭の周りを何周も出来る、そう思えるくらい嬉しい。
土方さんの手が僕の方へと伸びてきた。
頭を撫でられるのかと思ったら、その手は予想外な方向へと伸びていく。
(なっ…!?)
ひんやりと冷えきった土方さんの指は、熱く火照った僕の頬をつまみあげた。
「くくっ…やっぱりガキだな」
動揺する僕の様子が面白いのだろうか?声を出して笑っている。
恥ずかしさでさらに顔が熱くなってくる。
土方さんはそんな僕を牡丹の花のようだと言った。
僕が表情を変える様が牡丹の花が咲くようだと、そう言って笑っている。
(不思議だな…この人の言葉は何故か素直に心の中に沁み込んで行くんだ)
この後も僕は土方さんといろんな話をした。
ペラペラとくだらない事ばかり喋る僕を女のようだと思ったかもしれない。
それでも僕はこの部屋から出たくなかった。
この人の傍を離れる事が惜しいと、そう感じていた。
「土方さんは何の花が一番お好きですか?」
「梅だ。梅は桜に比べたら花の数は少ねぇし、華やかさもかける。だがな、あの白の美しさは…桜の薄紅色に勝る。鉄、おめぇは梅の花が暗闇の中、ぼんやりと光る姿を見た事があるか?」
(暗闇の中の…白い梅の花…)
僕の脳裏には何故か、血飛沫を浴びた土方さんがいた。
その美しい青白い相貌は赤い血で彩られている。
多くの屍の中で血まみれの刀を握り、ただ黙って立ち尽くしていた。
(この人は純白の梅の花みたいだな…白には赤が似合う。赤…血の色だ…血の色が恐ろしいまでに似合う。…あっ!)
「…うめのはな さけるひだけに さいてちる」
(間違ってないよね?)
そう呟いた瞬間、何故か土方さんの顔色が変わった。
酷く焦った様子で、僕にこの歌をどこで憶えてきたんだと問いただしてくる。
この歌は以前沖田さんの世話を命じられていた時、夜の庭を眺めていた沖田さんが教えてくれたものだ。
豊玉という有名な歌人の歌だと教えてくれた。
この句を聞いた時、僕は武士の魂を…新選組の事を歌っていると思った。
豊玉という人はきっと武士になる事を夢見ていたに違いない。
じゃなければ、こんなにも共感出来るはずがないもの。
だからこの歌を耳にした後、部屋に戻りすぐに紙へと書き写した。
お守りにしようと思った。
常に強くあるためのお守りだ。
懐からこの句を書いた紙切れを取り出し眺めていると、土方さんが「拙いな…」と苦笑いをした。
(うっ…もっと綺麗に書けばよかった。でも…これが一番綺麗に書けたものだから。これがあれば怖いものなんてない…心からそう思えるんだ)
「おめぇはこの歌がそんなに好きなのか?」
「はい」
「ふん」
土方さんは鼻で笑い、机から紙を取り出し筆をとって何かを書き始めた。
梅の花 咲ける日だけに さいて散る 豊玉
「お前にやる。新しい守りにしろ。本人の直筆だからな…せいぜい大切にしろ」
「はい?」
「それから…」
少し寂しげに笑う土方さんが、僕の頭をそっと撫でた。
「死を恐れない事は立派だ。だがな…それは命あってこそ思い言える事だ。自分の命は自分で守れ。犬死なんざするんじゃねぇぞ。お前にはまだなすべき事がたくさんある。それをなすまでは絶対に死ぬんじゃねぇ。いいな、約束だ。」
「はい!」
自分のはい!という声がなんだか遠く聞こえる。
耳がおかしくなったのだろうか?
目も霞んで…土方さんの姿がよく見えなくなってきた。
嫌だ。
もっとこの人を知りたい。
もっとこの人と話がしたい。
もっとこの人の姿を目に焼き付けたいんだ。
僕は縋るように手を伸ばした。
「…さん…ひじ…た…さ…」
「なに?」
「土方さん!」
「きゃっ!」
目を開けた僕の目の前には、見慣れた顔があった。
「…鉄君、おはよう」
「…おはよう…ございます、ノブさん」
「ずいぶんといい夢見てたみたいだね。だから起こさないでおこうと思ったけど鉄君が手を伸ばしてくるから、寝過ぎで体が痛くて起きれないから引っ張って起こしてくれって甘えてるのかと思った。もしかして…寝ぼけてた?」
「そう…みたいです。すいません」
「いいっていいって。謝らなくていい。鉄君は私にとって弟みたいなもんだからさ」
「すいません」
「だ~か~ら~謝らなくてもいいって。本当に謝らないといけない時だけ謝れば。男でしょ!もっと堂々としてなさいよ」
そう言ってノブさんは強く僕の背中を叩いた。
(あれ?このやり取り…、前もあったような…)
冷たい水で顔を洗いながら、ゆっくりと記憶を辿っていく。
「あっ…そうか!あれからもう一年経ったんだ…」
どうやら僕は五稜郭で過ごしていた頃の夢を見ていたようだ。
土方さんとの会話に中でしきりに謝る僕に『謝らなくていい』とあの人も言った。
『口癖だな「すいません」は。いいか、本当に謝るべき時以外は謝らなくていい。堂々としてろ。男だろうが!』
「早いな」
あれから一年。
僕はあの人に少しでも近づけただろうか。
もうすぐ一年。
北の大地に散った白い梅の花のように、僕は少しでも強くなれただろうか。
心の中の問いかけに、懐かしい声が答えてくれた気がした。
答え?
そんなもん知るか!
答えはおめぇの中にある。
だからおめぇしかわからねぇ。
自分で見つけろ。
-あとがき-
去年の日記を見てみました。
去年の今頃に何をしてたか憶えてたんですけどね。
兼六園に梅の花を見に行ってたって事。
でも、忘れていた事が一つありました。
去年の今頃、東日本大震災があってからもうすぐ一年だなって思ってました。
そしてそのまた一年前、東日本大震災があった年の3月、私は新選組の土方さんの小説を書いてました。
だから一年前の今頃、と言っても実際はもう少し後になりますが、小説を書いていた時の事を思い出していました。
生きる
それが小説のテーマでした。
上のSSはその小説の回想+続きです。
二ヶ月かけて書いて、何度も修正して書き上げました。
そして2011年5月5日から5月11日の7日間に渡ってUPしました。
本当に強い思いのある小説です。
クオリティはめちゃくちゃ低いけどね(笑)
今こうやって去年の事を考えてみて、生きるって事をもう一度考え直してみようと、そう思いました。
あと二ヶ月でお話をUPしてから二年になります。
二年経ったところでド素人の書き物なんで進歩しませんから、拙いところは目瞑ってください。