始まりの音 | ethlinの煩悩毛だらけ

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煩悩さらけ出し日記

自分で髪、切ったことある?  ブログネタ:自分で髪、切ったことある?  参加中
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前髪なら切った事ありますよ。

でもあんまり弄らないでいる。

美容師さんは計算しながら髪切ってるから、素人が切ったら困る事になるかな~と思って…つーか絶対に困ると思う。

私にとって髪を切る行為は、新しくスタート切るって意味もあります。

気分を入れ替えたり、自分を変えようとしたり…ってね。

今日は髪を切ってきます。

行くタイミングをすっかり逃し三ヶ月近く放置、全体はぼっさぼさ、前髪は簾状態です。

伸びたついでに少しだけ髪を伸ばそうかな~と検討中です。

特に前髪。

伸ばしてピンで上げて、久しぶりにデコ出しにしようかな~。




久しぶりに嫁妄想幕末編です。

嫁妄想は薄桜鬼の二次小説で、書いてある通り好きな人の嫁になった話です。

こういった話が苦手な方はご遠慮ください。

このネタ見た時、いつか書こうと思ってたネタを思い出しました。

春の夜にethlinが家出をし、屯所へ向かうお話です。

家出押しかけ娘なんです、幕末編の方は。

テーマ【嫁妄想】の中の『花音 ~サクラサク~』が、このお話の前後となります。

タイトルがお友達の以前のブログタイトルと被ったので迷いましたが、これしかない思いそのまま使いました。















晩ごはんも終わり、私は姉さまと二人で後片付けをしていた。

「こうしてethlinとご飯を食べたり、洗い物をしたり…そのうち出来なくなってしまうのかもしれないのね。」

胸がチクリと痛んだ。

「姉さまあのね…縁談の事だけど…本当に嫌だったら…その…断っていいの…かな?」

「いやぁね、会ってもないのに嫌かもしれないなんて。良さそうな人じゃない。あんな良い人がethlinをもらってくれるのなら、私も安心だわ。」

断れるハズがない。

会えば必ず話は婚儀へと進み始める。

でも縁談は嫌だ。父様や母様、姉さまとずっといたいからお嫁になんか行きたくないなんて言う勇気は…今の私にはない。

「もしかして嫌なの?」

「…」

嫌なのと聞かれても嫌だなんて言えるはずもない。

「…好きな殿方がいる…とか?」

「そっ…そんなわけないじゃない。可笑しな事言わないでよ。」

「だって…ethlinがお侍さんと茶屋にいるところを何度も見かけたって聞いたし。」

「ひじか…あっ…あの人はね、ずいぶん前に困っていたところを助けてあげたの。そしたらそのお礼にお団子を奢ってくれただけ。お団子一個じゃ礼が足りないっとか言って何度もご馳走してくれる、すごく親切でお人よしなお侍さんなんだよ。」

冷静を装い言い訳を並べてみたところ、姉さまはすっかり本気にしたらしい。

まぁこれは事実で、実際そうなんだから嘘ではない。

桜の木の下で怪我をしていたあの人を偶然見つけて、手当てして助けてあげた。

その後偶然再会して、それ以来気前良くお団子をご馳走してくれて、少しだけ話をする…土方さんとはそれだけの…ただそれだけの関係だ。

「そうなの?よっぽど困っていたのね、そのお侍さん。それにしても人助けしたなんて偉いわ。」

「うっ…うん…」

上手く笑えない顔を隠すように、私は俯き加減で頷いた。

「じゃあ部屋に戻ろうか。」

長くて綺麗な姉さまの手が私の手をとった。

この時、私はすごく愚かな事を考えていた。

やっぽりそれしか道はないと…そう思っていた。

「姉さま…あのね…もし、私がいなくなってしまったらその…姉さまは…どうする?」

「お嫁に行っても、ethlinが私の大切な妹である事は変わらないわ。」

「そうじゃなくて…その…。」

「なぁに?」

「…なんでもない。」

実行すれば、きっと全てを失う事になる。

絶対に取り戻す事なんて出来ない。

それでも…今の幸せを引き換えにしても、これから手に入れられるであろう幸せを全て放棄してでも、私は自分で見つけた未来を、あの人が目指す未来を見てみたいと…そう思っていた。

「変なethlin。」

やがて部屋の前に辿りついた。

動悸が激しい。

心臓の音が聞こえてしまうかもしれない。

それを落ち着かせるように目を瞑り、静かに息を吐き出した。

目をしっかりと開け、私は姉さまの顔を真っ直ぐに見つめた。

「…姉さま。」

「なに?」

「おやすみなさい。」

「おやすみ、ethlin。」

笑って見せた。

いつもの通り上手く笑えたはず。

だって姉さまは何も言わず、いつもの優しい笑みを浮かべて背を向けたもの。

私は部屋に飛び込み、ずっと前から用意していた着物を取り出した。

着古した父様の着物と袴を拝借し、自分の体に合わせて仕立て直したものだ。

明るいところで見れば酷い仕上がりだと思うが、それでも自分では上手く出来たと思う。

手早く男物の着物と袴を身に着け、静かに座った。

結わえていた髪を下ろし、鋏を手に取って少しばかり髪を切った。

静かな夜の鋏の音が響く。

想像以上に大きな音だった。

姉さまがこの音を聞きつけて部屋に飛び込んでくるんじゃないかと一瞬ひやりとしたが、どうやら聞こえてはいないらしい。

切り終わった髪を梳いて一つにまとめ、高い位置まで持ち上げた。

ふと疑問が過ぎった。

本当に後悔はないのか?

こんな事は馬鹿げている。

自分が選ぼうとしている道に、幸せなんてあるわけがない。

迷い惑い、結わえる手から力が抜けた。

いくら意にそぐわない縁談だとしても、断らなければ女としての幸せと最低限の生活を過ごす権利は手に入れられる。

父様や母様、姉さまにだって、また会うことが出来る。

それを捨ててでも、それでも自分は道を選ぶのかと…。

「迷うのなら…」

私はもう一度髪を梳き、手の中で束ねて高い位置へと手を上げた。

「迷うのならいっそ…後戻り出来ないほど、後悔出来ないほど……してしまえばいい…」

高く上げた髪に、私は思い切って鋏を入れた。

ひと際大きく響く鋏の音。

それは始まりの音。

新しい私が始まる音。

新たな人生が始まる音。











四月とはいえ夜は寒い。

吐き出すが白く立ち上る。

走るたびに短く切った髪が跳ね上がる。

立ち止まり、自分の頭に手をやった。

ひどく短くボサボサになってしまった自分の髪に、つい笑いが漏れた。

「我ながらひどい頭。うまく土方さんに会えても、私だってわかってくれないかもね。」

後悔がないとは言えない。

でも後悔はしない。

これは私が新しい道へと歩き出すための儀式だ。

初めて自分で決めた、自分が見つけた道へと走り出す儀式だ。

走る私の視界に、薄暗い中ぼんやり咲く薄紅色の花が見えた。

一陣の風が吹き、美しく咲き乱れる桜の花ははらはらと舞い散った。

その花びらが私の頬をそっと撫でる。

走らなくては

迷わず自分が決めた道へと

たどり着かなくては

私が見つけた桜のもとへ

私は無我夢中で夜の京を走りぬける。

荒く息を切らす私の呼吸と桜を揺らす風の音だけが、京の街に静かに響いていた。