願いごとひとつ  ~七夕~ | ethlinの煩悩毛だらけ

ethlinの煩悩毛だらけ

煩悩さらけ出し日記

これはなおねぇとリレー中の桜花出張版。


薄桜鬼の完全二次小説です。


歳三さんとethlinのそれぞれの七夕。


お互いの胸の中にあるものは…






七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕七夕




『おはようございます。今日はいい天気ですね。このままだと夜も晴れそうです。歳三さん、お出かけ気をつけて行ってきてくださいね。』


朝一番にメールを打ち送信する。


「今日はコレで終了!っと…」


ぼんやりと携帯の画面を眺める。


昨日の夜は歳三さんから電話がかかってきた。


「明日は朝から一日出かける。明日一日、電話やメールの返信もしてやれねぇ…すまねぇな…」


珍しく少し躊躇ったような声だった。


「あっ…あの…私、明日はお仕事が終わったら会社の人たちと飲み会がありますし、きっと帰るのは12時過ぎちゃいますから。朝はいつも通りメールしますけど、返信は気にしないでくださいね」


「クッ…飲めねぇくせに…ぶっ倒れるなよ」


「うー…大丈夫ですよ。次の日も仕事ですから、ちゃんと自重します」


いつもの声。


でも私の名を呼ぶ声が少し悲しく聞こえた。




窓から空を見上げる。


雲一つない空が広がっていた。


「今日は七夕か…」


彦星と織姫が年に一度


たった一度だけ…二人が会える日。


「…よっし!今日も一日がんばるぞっ!!」


頬をぴしゃぴしゃと叩いて、私はお布団から抜け出した。






少しだけ日が傾き始めた夕方、それでも太陽はチリチリと焼けるような日差しを向ける。


社用で会社の近くのビルへおつかいに行った帰り道、ふと商店街のノボリが目に入った。


「星に願いを…七夕祭り…か」


どうやら商店街の中にあるお寺でお祭りをしているらしい。


(ちょとだけ…寄り道してみようかな…)


子供や年配の人達で賑わう商店街の中ほどまで来ると、大きなお寺が現れた。


門から中を覗き見ると、たくさんの背の高い笹が並べられ、色とりどりの飾りや願いごとの書かれた短冊が風に揺れていた。


(たくさんの人が書いたんだなぁ~。どれどれ…おこづかいがUPしますように…健康祈願…九九が言えるようになりますように…か…)


一つ一つニマニマと短冊を眺めていると、受付係らしい女の人が近づいてきた。


「ほら、よかったらねぇちゃんも書きなさい。短冊ならたくさんあるから」


「えっ?あ?わっ私?あっあの…仕事中だから…」


そう言いかけてハタと気がつく。


(仕事中なのにサボってるんだっけ…)


「気にしない気にしない。せっかくだから書いてきなさい」


そう言って短冊の入った箱とペンを差し出す。


「他のOLさんもいっぱい来てお願いごと書いていったよ。年に一回のイベントなんだから、アンタもちゃんと書かないと…カッコいい彼氏とずっと一緒にいられますようにとか」


ニヤニヤと笑いながら薄紅色の短冊とペンを押しつけられた。


「えっ…あっ…えっと…ありがとうございます…」


「若いモンが遠慮したらダメダメ。一番の願いごと書きなさいよ。ちゃーんと願いごとが叶うように、ここの坊さん達がいいのにしてくれっから」


(一番の願いごと…)


私が一番望んでいる事。


それはあまりにも贅沢すぎて、手に入れたら指の隙間から零れ落ちてしまう。


(自分って…ホント幸せなれしてないというか…幸せビンボーさんだよね)


苦笑いをしながら、風にはためくたくさんの短冊をぼんやりと眺める。


(私が願う事…私が望む…私が…本当に望む事…)


私は薄紅の短冊に向かってお願いごとを丁寧に書き綴った。






私の手に届く場所は、すでにたくさんの短冊で埋めつくされていた。

(少しでも空に近いところがいい…。そしたらきっとこの願いは届くハズ…)

笹がしなっているとはいえ、一番てっぺんは到底手は届きそうにない。

(脚立とかないと…届かない…)

黙って笹を睨んでいると、見習い僧らしき男の人が脚立を手にして近づいてきた。

「願いごとは書けましたか?」

「はっ…はい!お願いします」

勢いよく短冊を差し出すと、見習いの僧はクスクスと笑いながら受け取った。

「どの辺がいいですかね…」

ちらりと短冊に目をやり、にっこりと笑う。

「きっと一番上がいいですね。天の川により近い方が、早く願いが届く」

そう言って脚立に上り、笹を少ししならせて短冊を結びつける。

手を離すと、薄紅の短冊が一等高い場所で風に乗って泳ぎ始めた。

「ありがとうございます」

「いえいえ…貴女のお願いごと、ちゃんと届きますよ」

にこやかに笑う僧侶に何度も頭を下げ、私は急いで会社へと向かった。