My Precious ③ ~Baby Breath Ⅲ~ の山南さん目線のお話です。























Staff Room と書かれたドアの前から静かに立ち去り、店内を見つめる。
(やれやれ…少し忙しくなってきたのですが…仕方がないですね…。昔から人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られると言いますしね)
そう言いながらも楽しそうに笑う自分がいる。
(土方君の傷は深い…。しかし彼女となら、その傷もゆっくりと癒される事でしょう…。彼女の事を守ってあげてください。今の君なら…必ず…)
ふと時計を見上げる。
(おや…そろそろ永倉君が帰ってくる頃かな)
「よう!山南さん!ご苦労さん」
(噂をすればなんとやら…)
「永倉君、配達ご苦労様です」
「今日は疲れたぜ。わりぃ…ちょっとだけ休憩させてくれよ」
そう言いながらStaff Roomへと向かう永倉君の手にはラジオと競馬新聞が握りしめられていた。
(やれやれ…永倉君も困った人だ…)
「永倉君」
「あっ?なんだ?山南さん」
肩をがっしりと掴んでStaff Roomへ行くことを阻止する。
「うぉっ!山南さんいてぇ!!」
「今人手が足りなくてね、ネコの手も借りたいんですよ」
肩を掴む右手の力をさらに強くする。
「山南さんいてぇ!肩がギリギリいってるって!!」
「永倉君…馬に蹴られるより、労働で汗を流してお金を手にしてはいかがですか?」
「うわっ…いてぇマジいてぇ…わかったから離してくれ、山南さん」
私は快く永倉君の肩から手を離した。
「わかってくれて嬉しいですよ。私も永倉君という被験者を得て、右手の握力増強のトレーニングの効果を実感しました」
「そんだけの握力もありゃぁ、熊一匹余裕で倒せるぜ」
肩を擦りながら永倉君は店頭へと向かった。
「熊一匹ねぇ…鉄扇を持った熊を倒すには…もう少しトレーニングが必要かもしれませんね」
左手を眺め拳を握りしめる。
うまく力が入らず震える左手を忌々しそうに見つめ、あの男の事を思う。
(芹澤…いつか必ず…お前を…)
もう一度Staff Roomの方に目を向ける。
(『その時』が来たら…彼女はどうするのでしょうね…。いや…愚問ですね。彼女には一つの答えしかない。一つの答えしか選ばないのでしょう)
店頭に戻ると、たくさんの女性客が花を眺め笑み浮かべていた。
(今日は花を買って帰ろう…私の大切な…あの人のために)
私の隣で優しく微笑む、最愛の君のために…