なおねぇの書いた クラブ桜花シリーズの ゆきちゃんと僕 の後日談です。
コレは薄桜鬼の完全二次小説です。
苦手な方は脱出してください
。

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Title:もうヤダ
本文:なんなんですか?あの人

お花の配達に来ただけなのに…ゆきちゃんの手に…ちゅうしてったんですよ
。
そりゃあ…ゆきちゃんは喜んでたけど…。
あんな目立つ事したから、みんなに「王子様と知り合いなんだ?」ってからかわれるし。
花束の配達が無事終わったとお礼のメールが入って1時間後、再びethlinからメールが届いた。
(確かにあいつには余計な事をしなかった…が…)
ため息をつきながら携帯をポケットにしまい店に出ると、配達から帰った総司がいた。
「土方さん、今帰りました。土方さんの忠告通りコロボックルちゃんには何もしていませんよ。そういえば姿が見えなかったな…。あっ…そうか!小さいから見えなかったんだ」
ある意味騒ぎを起こした事を怒鳴りつけたかったが、受取人のゆきが喜んでいたとなると文句が言えない。
(クソッ…)
心の中で舌打ちをし、閉店の準備に取り掛かる。
「総司、カフェの後始末の手伝いに行け。斎藤は私用で早く帰った」
今の俺には、総司の顔を見て平常心でいられる自信はない。
「珍しいな、一くんが早く帰るなんて。…デートかな?土方さんもたまには早く帰ったらどうです?」
ひらひらと手を振りながら総司はカフェへと消えて行った。
イライラとポケットの煙草に手を伸ばし、紫煙と共に悪態をつく。
「いつもいつも一言多いんだよ、お前は!!」
転がっていたカラのブリキのバケツを蹴る音が、静かな店内に響き渡った。
一週間近く経った今、ethlinの怒りはようやく収まったらしい。
隣のカフェで斎藤の新作スイーツを嬉しそうに口にしている。
「それでですね、お店での沖田さんのあだ名『王子様』なんですよ」
「確かにあいつは女から見れば王子様だろうよ。見目麗しく身のこなしもいい。口先と作り笑いなら佐之にも負けないからな。実際夜の仕事で№1を争っているのは、あいつか斎藤だ」
ethlinはきょとんとした顔で俺を見つめ「あんな人が№1なんですか?」と呟く。
「信じられない…だっだって…目は笑ってないし、甘い言葉には感情が入ってないし、笑顔はめっちゃ作ってるし…それに王子様って言うより…」
一呼吸置いて周りを見渡し、総司がいない事を確認して呟いた。
「エイリアンですよ」
自信満々な顔ではっきりと言い切った。
「くっくくく…エイリアンって…あの映画のエイリアンか?」
「そうです」
どうやら彼女の男性観や恋愛感は、他の女とは少し違うらしい。
女が喜ぶ歯の浮くような言葉が羅列されたメールに驚いて泣き出したかと思えば、優しい言葉をかけただけで赤くなって俯いてしまう。
気の強いethlinの姉さえも三回目で落とした佐之助を目の前にして、真顔で「胸のボタン外れてますよ」と言った女は、今のところコイツしか知らない。
「まぁ…お前もお姫様ってガラじゃねぇしな」
クスクスと笑いかけると、ハタと自分の服装を見てがっくりと頭を下げる。
今日ethlinは仕立てのよさそうなメンズのシャツにメンズのベスト、チノパンにコンバースのスニーカーを合わせたボーイッシュな格好だ。
「服装の事じゃねぇ。どんな服を着ていても中身がお前なら、お前自信であることに変わりはないだろ」
そっと頭を撫でてやる。
「お姫様ってのは危なくないように城に閉じこもってる…よな?お前は…そうだな…一寸法師ってとこか」
「えーなんでですか!?チビだから?」
脹れっ面のethlinが顔を上げる。
「誉めてんだよ。一寸法師は小さい身体でも一人で立派に鬼退治したじゃねぇか。志を持って諦めずに行動する。自分が信じた事を迷わずやり遂げる。守られてるだけのお姫様より、よっぽどお前らしい。まぁ…お前の相手の鬼…エイリアンだが…なかなかの食わせ者だからな。退治には時間がかかるだろうよ」
「私…そんな立派な風に見えるんですか?」
呆然とした顔で俺を見つめる。
「違うか?」
「わかんないですけど…そんな立派な事…考えてるかな?」
少し俯いて、照れくさそうに笑う。
「少なくとも俺の目にはそう映っている。危ないところに一人で突進して行って、一生懸命切り抜けようとしている。危なっかしすぎて…」
ふと見ると、顔に生クリームがついている。
「目が離せねぇな…」
クスクスと笑いながら腕を伸ばし、指でクリームを拭い指を舐める。
「甘い…」
ethlinは「あっ…」と小さな叫び声を上げて、また俯いてしまった。
「どうした?食い足りなかったのか?」
「えっ…違っ…///…違います…。満腹です。お腹いっぱいです。もう十分です」
図星だったのか…。否定はしているが、視線はケーキの並ぶケースを凝視している。さっき迷っていたベリーのタルトもよっぽど食べたかったのだろう。
「しょうがねぇ奴だな…。あんまり甘いもんばっか食うと身体によくないからな。待ってろ、紅茶のおかわりを持ってきてやる。今日はそれで我慢しろ。」
なにやらぼそぼそと呟くethlinの頭をぽんぽんと撫で、俺は立ち上がった。
「ケーキを食わなくてよかったってくらい美味い紅茶を飲ませてやる。お前のために特別にな」
小さな花が笑っていられるよう
俺の大切な花が笑っていられるよう
いつまでも俺の傍で優しく笑っていられるよう
そっと願いを込めて…
-おまけ-
「土方さんも素直じゃないなぁ~。さっさとキスくらいすればいいのに」
まかないを食べようと裏口からカフェに入ると、店の中では土方さんとコロボックルちゃんが楽しそうに談話中だった。
「沖田君、人にはそれぞれ時期というものがあるんですよ。急いては事をし損じる…と言うでしょう」
山南さんが空いた皿を手にして厨房に入ってきた。
「山南さん、覗いてたんだ」
「覗いていたとは聞き捨てならないですね。私は角の席で食事をしていた。すると土方くんが楽しそうに話をしているのが目に入ったので、遠目から見守っていた…だけだよ」
相変わらず食えない顔で笑う。
「沖田君、小人の国にいきなり人間が乗り込んできたら、小人達はどうすると思う?」
どうって…
「そりゃぁ…パニクって逃げ回るんじゃないかな?」
「よく出来ました」
「だからなんなんです?」
山南さんはニコニコと笑いながら、僕の肩を叩いた。
「だからですよ。小人と友好的関係を結ぶためには、まず、危険人物でない事をアピールしつつ、除々に距離を詰めて行かないと」
「要するにコロボックルちゃんに手を出すときは、細かい段階を踏んで近づかないと、警戒して仕舞いには手に入らなくなる…って事?」
「はい、正解です」
はぁ~とため息をつき、店の中の二人を覗き見する。
「土方さんも物好きだなぁ~。そんなめんどくさい子がいいなんて」
「でも、あの子に会ってから土方くんはよく笑うようになった。声を出して笑う土方くんは…何年ぶりに見たかな。私はいい傾向だと思いますがね…土方くんにも、土方くんの仕事の事にもね…」
少し意味深な笑いを残して山南さんは立ち去って行った。
「僕は正直どうでもいいけど」
チラリと店内の二人を覗き見る。
「でも面白いから少しだけ見守ってみようかな…」
まかない食を手にして、僕はそっと裏口から花屋の方に戻っていった。