本編はこちらから、詳しい設定等は①をお読みください。
小さな祈り ~P.S. I Love You ~①
小さな祈り ~P.S. I Love You~ ②
小さな祈り ~P.S. I Love You~ ③
小さな祈り ~P.S. I Love You~ ④
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「あさぎ、居たか?」
「佐之助さーん、お義姉さんどこにもいないですぅ~」
「一さん」
「ゆすら、どうだった?」
「やっぱり自転車も置きっぱなしだし、履物も全部揃ってます」
全員が家に揃うような時間だというのに、歳三兄さんと義姉のethlinの姿が見えない。
今日、兄さんは珍しく昼過ぎに帰ったらしい。
リビングに鞄と上着が置きっぱなしであるという事は、少なくとも家に入ったという事だろう。
「一さん…もしかして…総司君の作った…地下シェルターに連れて行かれて…」
「ゆすら、しっかりしろ。いくらなんでもありの総司でも、兄さんに気づかれないように地下シェルターは作れない。昨日のSF映画の見すぎだ」
「佐之助さ~ん…もしかして…義姉さん…グッ…グレイと間違えられてFBIに捕獲されたんじゃぁ~」
断わっておくが、あさぎ義姉さんの発言は本気である。
そして不謹慎ではあるが、そこにいた全員がありがちな宇宙人捕獲の嘘写真を心に思い描き、一応いい大人の義姉が宇宙人として連行される想像をしているとは、焦りのあまりに俺も気がつく事が出来なかった。
泣き出すあさぎ義姉さんの声に反応して、腕の中の赤ん坊も泣き出す。
赤ん坊の泣き声で我に返ると、佐之助兄さんがため息をつきながらあさぎ義姉さんに優しく声をかける。
「あさぎ…いくらなんでも宇宙人はないだろう…(いや…しっかり想像しちまって、もう少しでふきだすところだったが)。お前の不安がこいつにも移っちまうな。とにかく部屋に戻れ。すぐに見つかるから心配するな。沙雪、悪いがあさぎについててやってくれ」
佐之助兄さんは苦笑しながらあさぎ義姉さんと沙雪を二階へと見送った。
「おい、どうだった?近所中探してみたが、全然姿が見えねぇ。家の中は全部見たのか?」
「新八兄さん、手分けして全部調べました。トイレも風呂場も俺達の部屋も…」
「あっ!そー言えば探してない場所が一箇所だけあるぜ」
一番下の弟の平助がポンと手を叩く。
「本当か?平助、どこだ」
「歳三兄の部屋」
全員が平助の指先にある部屋の扉を見つめる。
「…確かにな」
佐之助兄さんが呟く。
「盲点だったぜ」
新八兄さんが頷く。
「調べる価値はありますね。しかし問題が一つ」
「なに?一兄?」
「誰が兄さんの部屋を調べるか…だ」
一瞬シーンとした空気の中、新八兄さんが一人唸った。
「お前ら二人が心配じゃねぇのか?部屋で二人息絶えてたらどうするつもりだよ」
「いや…さすがに誰もそんな事は心配してねぇ…。仲良くあの世行きとまで追い詰められるような二人じゃねぇしな。まぁ…そこまでいうなら新八、お前が見て来い」
佐之助兄さんは呆れた顔で新八兄さんの肩をポンと叩く。
「あっ?あぁ…いいけど…なんだよ、そのみんなの嫌そうな顔は?なんでゆすらちゃんまでそんな赤い顔してんだよ」
「新八兄は鈍いなぁ~。そんなんだから彼女も嫁さんもいないんだって」
「平助、お前までなんだ?みんなで何隠し事してるんだよ?」
「あのなぁ新八…お前は二人の命を救う英雄になるかも知れない…だがな、ただのデバガメになる可能性もでかいんだぜ」
新八兄さんは「はぁ?」と唸りながら歳三兄さんの部屋へと向かう。
しかし真っ赤な顔をして途中で引き返してきた。
「お前ら、俺に変な役目をさせるんじゃねぇ!!みんな揃って俺に彼女も嫁もいないからバカにしてんのか?」
「バカにしてるんじゃなくて、バカだからしかたないんじゃないかな」
振り向くと、総司がニヤニヤと小馬鹿にしたような顔で立っている。
「総司!お前今までどこにいた」
佐之助兄さんが総司のシャツの襟を掴み、今にも殴りそうな雰囲気になる。
ゆすらが「あっ…」と小さく叫び声を上げると、拳を強く握りしめ総司から黙って離れた。
「どこって…嫌だな~。僕だって兄さんと義姉さんを探してたんだけど。あっ…それでね報告。二人はちゃんと歳三兄さんの部屋にいるよ。二人仲良く昼寝してるみたいだね。と言ってももうお昼は過ぎたか…」
「昼寝…?」
「そう昼寝。兄さんも義姉さんも疲れてたんじゃない?ぐっすり眠ってるよ。僕が部屋に入って寝顔を覗きこんでも起きないんだから」
「総司。お前まさか、写真を撮ったり…そんな事はしてないだろうな」
俺の威嚇もさらりと流し、しれっとした調子で総司は言った。
「歳三兄さんの幸せそうな顔なんて、撮っても面白くもなんともないよ。言っとくけど、ノックもしたし、入りますって声もかけた。部屋に鍵はかかってなかったから責められる事は一つもないよね。佐之助兄さん、あさぎ義姉さんに報告して、沙雪を返してもらうよ」
慌てて総司の背中を追いかける佐之助兄さんに続き、平助が「宿題!!」と叫びながら部屋へ上がる。
階下には俺とゆすらだけが取り残された。
「とにかくよかったですね、一さん」
「あぁ…すまなかった」
「なんで謝るんですか?」
「部屋にいるという簡単な答えが見つけられず、お前を騒ぎに巻き込んだ。俺の責任だ」
ゆすらは「大丈夫ですよ」と俺の手を取り小さく笑う。
「確かに慌てちゃいましたけど今回の事で、この家のみんなが家族の事を大切にしてるんだってわかりました。いつもお義兄さんに意地悪ばっかりって困らせてる総司君も、本当はお義兄さんの事が好きなんですよね。だから…」
「だから?」
ゆすらは明るく笑って俺の手を握る。
「一さんが私を選んでくれてこの家の一員になれたのが嬉しいです。早く一さんの本当のお嫁さんになりたい。でも…」
「まだ何かあるのか?」
ゆすらは悪戯っぽく笑い、俺の手を引きながら歩き出した。
「今は晩御飯の準備が先決ですね。今日は私が作らなきゃ…だし。だから一さん、今日は手伝ってくださいね」
「そうだな…あんたと二人ならなんでも出来る」
照れくさそうに笑うゆすらを見つめながら、俺は大きな幸せを感じていた。
あさぎさん、ゆすらさん、勝手にご出演いただきました~(> <)。
あさぎさんの台詞がどうしても書きたくて、おまけをUPさせていただきました(*^ー^)ノ。