死を恐ろしいと思った事はない。それを恐れる事は剣客として死を意味するからだ。
俺は君主に殉ずるふりをして、死に場所を求めていたのかもしれない。
あの時までは。
この感情を知るまでは。
ひらひらと白い花びらが舞い散る。花びらは熱で融け、大地へと還る。
この冬最後の雪だろうか。この世で見る最後の雪だろうか。
空から舞い降りる最初の一片を一緒に見たいと願い叶った今、何を願えばいいのか。
降りしきる雪の結晶を払いもせず、家路を急ぐ。答えを見つけられないままただ一人歩く。
「一さーん」
千鶴の大きな声が響き渡る。
傘を差し、頬を上気させながら千鶴が近づいてきた。
「一さん、お帰りなさい」
「ただいま」
千鶴は嬉しそうに腕をからませ、空から落ちる雪を見つめている。
「一さん、今年最後の雪かもしれませんね」
「あぁ、そうだな…」
「最初に落ちる一粒を一緒に見たから、最後の雪も一緒に見たかったんです」
「それで家を飛び出してきたのか?」
「はい」
千鶴は哀願するような目で俺を見つめる。
「一さん、次の冬もその次の冬も…一緒に最初の一粒を見ましょうね」
「…そうだな」
答えはすぐそこにある。一人では見つけられなくても二人ならきっと見つかる。
「もう少し、長生きしなくてはならないな」
「はい…、私の為に長生きしてください。私を置いていかないで…ください」
小さな肩を抱き、家路を急ぐ。
残りの人生(まいにち)を愛おしい君の為に生きる
愛おしい君がいる限り、俺は人生(まいにち)を生きよう
あとがき
中島美嘉の『あなたがいるから』からタイトルをいただきました。
ネタがありがちだな~と思いながら書きました。その分がんばって斎藤さんで書きました。
この歌の歌詞は、どうしても斎藤さんをイメージしたかったのです。
詳しい曲の紹介はMy favorite Song ♪でしたいと思います。