今日は2月14日。
俺、藤堂平助にとって最悪の一日の始まりだ。
彼女がいないから?
馬鹿言え、お前らとは違うんだぜ。
ちゃんと『千鶴』ってスンゲーかわいい彼女がいる。
じゃぁなんで最悪だって・・・?
昨日喧嘩したからだ。
笑いたければ笑えよ。
本当にくだらない理由で喧嘩したからさ・・・。
そういうことで、今日の2月14日は一人家でふてくされている。
親も姉貴も出かけていて静かなもんだ。
リビングのソファーでうたた寝をしていると
ピンポーン
うるせえな
ピンポーン
配達のおっさんなら後にしてくれよ。
ピンポーン
いったいどこのどいつだ?
文句の一つでも言おうと、玄関に向かう。
まったく・・・今日くらい傷心にひたらせてくれよ。
「はいはい・・・」
おざなりの玄関を開けるとそこには
「・・・こんにちは・・・」
髪に、コートに雪の結晶をまとわりつかせた千鶴が立っていた。
「おっお前・・・何してんだよ?」
俺の馬鹿
こんな言葉をかけたいんじゃない。
「どこか出かけてるのかな・・・と思って・・・。でも・・・今日渡したかったし・・・」
「とにかく、外は寒いから入れよ」
「・・・うん」
「タオルで頭拭けって。なんか温かい飲みもの入れてやるから」
「うん・・・」
う・・・気まずい。
本当は、昨日の事を謝りたいけど、千鶴が黙りこくっているから言いにくい。
「ほら、コーヒー。熱いから気をつけろ」
「うん・・・」
ソファーに並んで座ったものの、変わらず「うん」しか言わない千鶴の沈黙が怖い。
もしかしたら「別れる」って言われるのか?
それ以前に、俺が「彼女」って思っているだけで、千鶴は他の奴が好きなのか?
キス・・・したことないもんな。
好きって言葉も、恥ずかしくて、思っているより言えないでいるしな。
「あのね・・・」
「おっおう・・・」
笑いたければ笑えばいい。
俺は千鶴が好きで、千鶴一言で浮上するし、急落もするんだ。
「これ、バレンタインデーのチョコ」
そういって、綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「どうしても、今日渡したかったの」
お前ら、俺の気持ちがわかるか?
喧嘩して気まずいっていうのに、わざわざチョコを私に来たんだぜ。
顔が緩むのを我慢しつつ、箱の中を開けると、ひんやりと冷えた陶器入りチョコレートとスプーンが入っていた。
「柔らかいチョコだから、スプーンですくって食べるの」
「うまそーだな!!今食っていいか」
「うん、食べてみて」
さっそく一口、口に運ぶ。
「うまい。俺の好きなミルクチョコ味じゃん」
「よかった・・・喜んでくれて。味見してないから、ちょっと心配だった」
「ん~ん?千鶴は食ってないのかよ?」
「うん・・・迷い過ぎちゃって」
俺の為に、一生懸命にチョコを選ぶ姿を思い浮かべる。
本当にかわいいぜ。
お前って。
「じゃぁ・・・ちょっと食ってみ?」
チョコをすくって差し出すと、千鶴は真っ赤になって俯いた。
「うまいぜ、千鶴の選んだチョコ。チョコ嫌いじゃねぇよな?」
「あのね・・・平助くん・・・」
「なんだ?」
「その・・・スプーン・・・平助くんの使ったやつだよね・・・」
・・・
・・・・・
・・・・・・
「あ~、悪い悪い、いや・・・そんなつもりはなくて・・・えっと・・・だから」
慌てふためく俺を見て、千鶴はクスリと一笑して、スプーンのチョコをパクリと食べた。
「ごちそうさま・・・」
千鶴はまた俯いて黙ってしまった。
俺はそんな千鶴が好きだ。
本当に好きだ。
「あっあのな千鶴」
「なあに?」
昨日はゴメン。
一言だけ言えばいい。
平助、言えよ!!。
「あのさあ~……………キスしていい?」
俺のバカ!!
己の欲望を先に口にしてどーする。
「平助くん…」
「わりぃ…そうじゃなくていや、したいんだけど」
俺、最悪だぁ~。
「とにかく昨日はゴメン。俺、千鶴に嫌われたと思ったら…もう…生きた心地しなかった…」
やっと言えた。
「俺、千鶴が好きだ。誰よりも好きだ。だから…キスしたい…」
やっと気持ちを伝えられた。
「私も…平助くんが…好き」
そういって俯く千鶴の頬に触れて、そっと唇を重ねた。
キスって気持ちよくて
幸せなものなんだな。
今日初めて知った。
そして男が理性を保つのがすごく大変だって事・・・
このあと嫌っていうほど知らされた(笑)
~ あとがき ~
平助くんの心の声を書くのが、面白かったです。
終わり。
うそです。うそです。
平助くんのお話はわりとすんなり書けました。
平助くん自体がなんか面白かったし。
テーマは「とにかく俺は千鶴とチュウがしたい」
といったところでしょうか
?