まさかの・・・としぞーといっしょの続きでございます。
携帯からの閲覧回数が結構多いので、台詞の色分けでなく、語り口調にしたいと思います。
としぞーといっしょ
せつぶん
其の一
今日の屯所はあわただしい。
それは今日が節分だから。
永倉さんと平助くんは
「風間の奴らが乗り込んできたら、豆まいて追っ払ってやる」
と前日からいきまいていた。
私も斎藤さんと豆まき用の豆と食べる用の豆の準備をしている。
「ちづるちゃん。ちづるちゃんは誰とせつぶんするの?」
「???トロちゃん?みんなとでしょ?」
「ちがうニャ・・・せつぶんは大切な人とするのニャ(えっへん)。さのすけから聞いたニャ」
節分はそういった主旨の行事じゃないと思うけどな。
「斎藤さん、何か知ってます?節分の意味・・他にありましたっけ?」
さっきから黙々と豆を煎る斎藤さんに問いかけたが、返事がない。
うーん。くだらない事聞いちゃったかな・・・。
そう思って黙っていると、突然斎藤さんが口を開いた。
「トロ、佐之助が言ったのは、『節分』ではなく『接吻』ではないのか?」
真面目で寡黙な斎藤さんから『接吻』なんて言葉が出るとは思ってなかった私は、呆然としてしまった。
「せつぶんは大切な人にちゅう
する事なんだって(エッヘン)」
「トロ、今日は『節分』であり『接吻』ではない。邪気を祓うために豆を撒く日だ」
「そうなんだ・・・(ショボン)」
勘違いしていたトロちゃんはかわいそうだけど、そんなドキドキする日があったら・・・びっくりかも。
「トロちゃん、勘違いだったのは残念だけど、今日は2つも言葉を憶えれたね」
「うん」
「雪村」
「はい?」
「残念な知らせがある」
斎藤さんはなぜか豆を煎る手を休めずに、目線だけは背を向けて声をかけてきた。
後ろに誰かいるのかな?
振り向こうとすると
「後ろを向くな」
と激しい口調で怒鳴られてしまった。
「・・・ごめんなさい」
「すまない・・・怒鳴るつもりはなかった」
それでも身体の向きは変えずに、何事もないような顔をしている。
「あんたは今まで通り俺の仕事を手伝ってくれ。仕事をしながら話をする」
「はっ・・・はい」
ただならぬ斎藤さんの様子に驚いたけど、斎藤さんの手伝いに戻る。
「さっきの・・・トロの話だが・・・」
「言葉を2つ憶えたなんてすごいですよね」
「違う・・・そこではない・・・」
かまどに向かっているせいか、斎藤さんは耳まで真っ赤になっている。
「斎藤さん、冷たい手ぬぐいを持ってきましょうか」
「・・・いや・・・いい・・・とにかく・・・面倒な事になった」
「面倒な事?」
「今の『好きな相手に接吻をする日』と言ったトロの発言が、平助達に聞かれた」
「でも平助くんは今日が節分って知ってますよね」
「無論。しかしトロから聞いた新しい行事と言い切ってしまえば・・・奴らはあんたに対して行動に出る」
「行動って・・・?」
なんだろう?
「誰があんたの唇を奪うのか・・・平助と総司ならきっとやる。あの二人はあんたに惚れているからな」
「・・・・・・・・・・・えーッ
」
「あんたが誰か思う男がいるなら・・・自分の身は自分で守れ」
斎藤さんはいつもの通り、静かな口調で言い放った。
その頃、俺、原田佐之助は面倒な事を起こしてしまったと後悔していた。
ガキに変な言葉教えちまったな・・・。
いや・・・トロに教えたところまではいい。
トロが千鶴に報告した事もいいだろう。
面倒なこいつらが、会話を聞いたって事だ。
「ぜーったいに千鶴の唇は俺のもんだから」
「やだなぁ、平助くん、知らないの?千鶴はとっくに僕のモノなんだけど?」
「総司、バカな事言ってんじゃねぇ。千鶴ちゃんは俺が守ってやる」
「あー!!新八っさん!!ぱっつぁんまで千鶴の事狙ってるのかよ?」
「バカ言え!!俺より佐之の方が危ねぇだろう」
勝手に言ってろ・・・。
俺も名乗りを上げたいのはヤマヤマだが、アイツの心にいるのが誰か気がついちまったら
そいつの心に千鶴がいるのかもしれないと気がついたら・・・
もったいないが、見守るしかねぇだろう。
それなのにこいつらときたら、千鶴の気持ちに気がついているのかいないか。
総司は気がついていても、強引に攫っちまうだろうな。
俺はアイツが大事だから、見守ってやりたいだが。
「なに騒いでるんだ?」
鬼役は、この人以外適役はいないだろうってくらい渋い顔をして土方さんが現れた。
「あっ、土方さん・・・あいつらはどうせ今晩豆をいくつ食べるかでもめてんだろう。それより、外出か?」
「近藤さんの頼みとあっちゃぁ、断れねぇからな。少し遅くなる。」
この人はいつ休んでいるのか、飯を食っているのかわからないくらい多忙だ。
「土方さん、今晩は帰ってこなくていいですよ」
「そうそう、夜道は物騒だし、明るくなってから帰ってきたほうがいいって」
「土方さん、今日は非番だろ?どっかで羽伸ばしてこいって」
三人三様のねぎらいの言葉(総司は違うか)の中には、なにか良からぬモノが含まれているわけだが・・・
「お前ら・・・なに企んでやがる?」
やっぱりこの人にはお見通しだな。
「いやだなぁ~、いつも忙しい土方さんを思っての言葉じゃないですか」
「そうそう、今日は新選組の事も鬼の事も忘れて、パァ~っと遊んできなよ」
「土方さん、屯所は俺達がいるから大丈夫だって。まぁ宝船に乗った気持ちで行ってきてくれよ」
「新八っさん・・・それを言うなら大船!!」
土方さんはため息を一つついて
「お前らに任せるのが心配だから、羽も伸ばせないんだろうが・・・」
とぼやきながら、出て行った。
背中を見送りながら迷っていたが、一番厄介な総司が部屋に戻ったのを見て、俺は土方さんを追いかけた。
「土方さん・・・」
「どうした?佐之?」
「今日はどんなに遅くなっても、屯所に戻ってきてくれ」
やべぇ
いかにも今晩屯所で事件が起きますって宣言してるもんじゃねぇか。
「そうだな。トロと節分の豆まきをする約束をやぶっちまったしな。・・・なるべく早く帰る」
気がつかなかったのか、そう言ってあっという間に行ってしまった。
土方さん、本当に早く帰ってきてくれよ。
あのバカの暴走は俺に止められる自信はねぇ。
あと出来ることと言えば、千鶴が自分で身を守れるよう、援護してやるだけだな。