その日、僕はいつもどおり巡察に出かけていた。
不逞浪士を切り殺し、紅く染まる僕の手。
長州と薩摩藩の連中も現れて
いつもより軽い調子で、目の前の敵を斬る。
目の前に敵がいるんじゃない。
目の前にいるから敵なんだ。
最後の一人・・・
僕がもうすぐ楽にしてあげるよ。
近づいた時、それは不敵な笑みを浮かべた。
今、目の前にいるのは・・・
僕?
「総司さん・・・総司さん・・・」
「ん・・・?」
揺さぶられて目が覚めた。
ぼんやりと目を開けると、千鶴が半泣きの顔で見下ろしている。
「総司さん、大丈夫ですか?嫌な夢でも見たの?」
夢・・・
そうか・・・
夢を見ていたんだ・・・
「すごい寝汗。早く着替えないと風邪ひいちゃう。身体も拭かないと・・・」
そう言って立ち上がろうとする千鶴の腕をひっぱり、倒れるように座り込んだ彼女を強く抱きしめる。
「総司さん・・・?」
繰り返し見る夢の意味はわかっている。
人の血を浴び続けた僕は、僕に殺される。
僕の中の病に殺される。
千鶴・・・僕は怖いんだ。
眠りについたら、もう君に会えないんじゃないかって。
死によって、君と引き離されのが怖いんだ・・・。
「総司さん、そろそろ離してください」
「嫌だ」
「もう・・・」
千鶴はあきれたように、僕の背中をぽんぽんと叩く。
「着替えないと風邪をひいてしまいます。身体を拭きますから、ちょっと待っててください」
「千鶴」
「はい」
僕の腕を拭いている俯き加減の千鶴は、顔を上げずに返事をした。
「ねぇ?」
「はい?」
顔を上げない千鶴にしびれを切らして、僕は千鶴に抱きついた。
「わっ!総司さん。どうしたんですか?」
「千鶴・・・」
「はい・・・」
目を見て話すのが怖い。
千鶴の前で泣いてしまうかもしれない。
だから抱きしめたまま、耳元で告げるよ。
「もし僕が消えて無くなってしまったら・・・、君が一人になってしまったら・・・」
本当はこんな事は言いたくない。
でも、千鶴の事を思えば、言わなくてはならない。
言葉を紡ぎだしている今も、まだ迷っている。
「誰かと一緒になって・・・幸せになって・・・」
千鶴の身体がビクッと震えた。
言葉にしてしまった不安を消し去るように、千鶴を強く抱きしめる。
千鶴と出会って、千鶴が僕のモノになって
僕は『死』が怖くなった。
それはけして避けられない。
でも一番怖いのは・・・
「でも・・一つだけお願いがあるんだ」
どうか
どうかお願い
このわがままだけは聞き入れて欲しい。
「これから誰かを好きになっても・・・、僕の事は忘れないで・・・。他の男がその瞳に映っても・・・心の中では僕を想って・・・。僕を忘れないで・・・。」
君から僕の存在が消えるのが怖いんだ。
女々しいとわかっていても、願わずにいられないよ。
「総司さん」
千鶴は優しく耳元で囁いた。
「私はずっと総司さんの傍にいます。総司さんがいなくなっても・・・貴方だけを愛し続けます。私は・・・もう・・・
貴方以上に誰かを好きになることなんて・・・出来ません」
君はいつも僕の欲しい言葉をくれる。
そんな君がいとおしい
そんな君だから、僕のモノにしたかった。
乱暴に唇を奪い、さらに耳に舌を這わせる。
「総司さん・・・身体・・・拭かないと・・・」
そういう千鶴は身体の力が抜けて、布団の上に倒れこんだ。
「ダメ・・・君が悪いんだよ・・・」
すっかり脱力してしまった千鶴の身体にまたがり、唇を身体中に這わす。
「総司さん・・・」
「なに?」
「明日・・・庭で日向ぼっこ・・・しましょう・・・。総司さんには・・・こんな暗闇・・・より・・・日向が・・・に・・・あ・・・う・・・から・・・」
そうだね
明日
僕に明日があれば
陽だまりの中の君を目に焼きつけたい。
どうか
どうか明日
また君の姿を見られますように。
終
あとがき
今回は沖田さんのシリアスなお話でした。
テーマは「闇」と「ひだまり」です。
今回のお話を書くきっかけを作ったのは、アメブロで(一方的に)仲良くしていただいている、
ゆすらさんと沙雪です。(名前勝手に出しました。この場を借りてお詫び申し上げます)
今回あとがきが長いので、良かったらここで脱出してください。
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以前ゆすらさんのブログで『愛のままに 我が儘に 僕は君だけを傷つける』という沖田さんのお話が載っていて、ちょうど読んでいた時に中島美嘉の『shadows of you』を聴いていたんです。
お話と曲がぴったりで
(注:私的解釈です)、いやもう・・・興奮(←勝手に)。
それ以来『Shadows of you』は自分の中で特別な歌になりました。
何回も聴いているうちに、「自分の言葉でこの曲をベースにお話を書きたいな」と思って書き始めたのが今回のSS(ショートストーリ)です。
そして沙雪さん。
『貴方へ送る有難う』という沖田さんのお話を書かれてまして、
そのコメントに「沖田さんは日向が似合うと思う」とコメさせていただきました。
沙雪さんも「似合いますよね」とおっしゃっていただいて
。
歌詞に関しては、英語の部分ははっきりとした訳がわからないのでフィーリングで解釈してます(スイマセン)
なので「違うよ」と思われる方いらっしゃると思いますが、あくまで私的解釈なので。
曲に興味のある方、良かったらこちらの記事で語っていますのでどうぞ。
↓
My favorite Song ♪ vol.4