静かに眠る土方の傍で、一人酒を呑んでいる。
時折舞散る桜の花びらを目で追っていると、羽織を抱えて走ってくる人影が見えた。
「はぁ…はぁ…風間さん?」
「久しぶりだな、千鶴」
「原田さんに聞いてきたけど…まさか…」
「土方の介抱をしていとは…か?」
千鶴は俺と土方を交互に見渡し、くすりと笑った。
「風間さん、風邪ひきますよ」
持ってきた羽織を土方にかけ直し、俺の羽織を肩にかける。
夜風に当たって、羽織はひんやりと冷たい。
「いつまで突っ立っている?」
きょとんと立ち尽くす千鶴に、盃を一つ差し出す。
「一人で酒を呑んでもつまらぬ」
「あのぉ…私…お酒は…」
「俺の酒が飲めぬか?」
躊躇する千鶴にもう一度盃を差し出す。
「夫が酔い潰れたとなれば、妻が代わりをするしかあるまい?」
千鶴は覚悟を決めた様子。
腰をおろし、盃を受け取った。
「そうこなくてはな…」
注がれた酒を睨み、一気に飲み干す様を眺めながら、かつて自分のモノにしようとしていた女を眺める。
「…苦い」
「ふん…酒の味はわからぬか?」
「おかわりお願いします」
キッと気の強そうな目で俺を睨み、空になった盃を差し出した。
「無理はするな」
盃を取り上げようとすると、さらに目の前に盃を突き出した。
「主人の代わりを務めるのも妻の役割です」
「フ・・・クククククッ・・・」
「何が可笑しいんですか」
「おどおどして、守られていた女が・・・今度はお前がこいつを守る番か?」
「そうです」
そう言った千鶴の瞳には、迷いが無い。
「私・・・今まで歳三さんに守られてばかりで・・・。でも今度は私が守ります。この人を傷つける人がいるなら
私が守ります」
まっすぐ俺の目を見る。
そらせぬほど強く。
「それでこそ、この俺が求めた女だ」
一気に呷らぬよう、少しだけ注いでやる。
「当分付き合ってもらうからな。お前までつぶれてはつまらぬ・・・。ちびちび味わえ」
「ふふっ」
「なにが可笑しい?」
「風間さん、変わりましたね」
変わった?
「変わったのはお前の方だろう」
「いいえ、風間さんです。今までの風間さんなら、土方さんに羽織をかけてあげる事もしないし、私を酔いつぶして連れ帰っていますよ」
「他の男のモノになった女など・・・興味は無い」
酒を飲んで紅く染まった頬がさらに高揚して、耳まで染め上げる。
「図星か・・・」
「意地悪なところは変わってないんですね」
「そう簡単に変われるはずはない」
フンと一笑して、静かに眠る土方を見やる。
「お前は好い男を選んだな」
「えっ?」
「この男はまがいモノの鬼ではない。本物の鬼でもないが・・・。」
盃に落ちた桜の花を一瞥し、酒を一気に呷る。
「さしずめ・・・薄桜鬼・・・といったところか。桜のように儚い・・・誇り高き鬼・・・」
いつまで咲くのか
次の春も咲き誇るのか
俺にはまったく関係の無い事だ。
「せいぜい大切にしてやることだな」
最期を見届ける事は無いだろう薄桜鬼の為に、今はこの盃を捧げよう。
あとがき
下書き中のSSで、土方さんと千鶴ちゃんのお話があって、大晦日の話なんですが(今更
)その後の春のお話的にしてみました。
薄桜鬼のくだり、うろ覚えで、すごい嘘つきだと思います。
ごめんなさい
。
ゆきちさんのイラストはとても素敵なので、ぜひぜひ見て、妄想しちゃってください。
妄想推奨です(笑)