「あー 千姫ちゃんの玉子巻き、出し巻きだー。美味しそう」
「たくさん作ってきたから食べて食べて。平助くんは・・・言われなくても食べてるわね・・・」
「うめぇ! 千姫マジで料理上手な!」
いつもの三人でのお昼休み。
今日はお天気がいいから、屋上で昼食会。
人はまばらにいるけど、広い場所だから自然とわあわあ言い合う。
「千鶴の玉子巻きも綺麗にできてるわよ。千鶴んちのは塩味なのね」
「塩味も甘いのも両方作るよ。土方さん、甘い玉子巻きのイメージじゃないし、最近は塩味が多いかな」
土方さんは学校の生徒会長で、父様の知り合いの息子さん。
自宅と学校が遠すぎて、自宅通学が難しいということで、高校卒業まで家に居候している。
お弁当はいつも父様の分も作っているし、2個作るのが3個になっただけで・・・、かえってお弁当作りが楽しいのが本音。
玉子巻きをつまもうとすると
あれ?
一切れ足りない
「あー平助くん、私の玉子巻き~」
「食わねぇから、いらないと思ったんだよ。千鶴の玉子巻きいった・だ・きー」
「もう・・・」
自分も最後の一切れを口にする。
ガリ
ん?ガリ?
もしかして・・・これっ・・・
「平助くん・・・」
「ひゃんだ?」
もぐもぐしている平助くんを見つめる。
「玉子の中に・・・もしかして・・・殻入ってない?」
「ん?飲み込んじまったからわかんね。そーいえばコリコリするもの入ってた気もする」
「えー
ちゃんと思い出してよ」
「そんなに気になるなら、校門で待ち伏せして直接聞けばいーじゃん。どーせ帰る家は一緒なんだしさ」
平助くんはニヤニヤしながら軽く言う。
「メールで聞いてみたら?メアドくらい交換してるでしょう?」
「あぁ 千姫ちゃん、ナイスアイディア」
早速ポケットをごそごそと探したけど・・・ない!?
「携帯・・・忘れてきたみたい・・・」
ああ・・・こんな時に限って・・・。
突然、平助くんの携帯が光った。
「あーなんだ・・・げっ、土方さんからメールだ・・・。・・・・・・千鶴・・・わりぃな」
「なっなに?」
「今日生徒会だった。土方さん、帰り遅いわ。千鶴の携帯にも、今頃メール着てるんじゃねーの?」
午後からは最悪だった。
玉子巻きの事が気になって心あらずのところを、苦手な数学の時間に当てられるし。
体育の時間、思いっきりとび箱に激突。
掃除の時間はゴミ箱をぶちまけるし。
「気にすると余計悪い方へ転がるわよ。気にしないのが一番!!」
と千姫ちゃんに慰められて、とぼとぼ帰宅した。
「歳三君はまだ帰らないのか?」
父様がビールを持って現れた。
「生徒会で遅くなるって、連絡きてたよ。」
平助くんの言うとおり、置きっぱなしの携帯には、土方さんからメールが届いていた。
『生徒会で遅くなる。飯は先に食べててくれ』
用件のみのぶっきらぼうな内容。玉子巻きのことには一切触れていない。
「そうか・・・今日こそは酒を酌み交わそうと思ったんだが・・・」
肩を落とす父様の手にはちゃっかりグラスが二つ。
「父様、土方さんは未成年です!!」
「むぅ・・・またの機会にするか」
父様と二人きりの夕飯を済ませ、洗い物をしながら、どうやったきり出そうか考える。
玉子巻きどうでした? 美味しいで終わっちゃったら困るな。
それよりも感想聞いてるみたいだし。
玉子の殻、入ってませんでした?
入ってなかったら余計なこというだけだし・・・。
ガタンと音がして、土方さんが台所に現れた。
「今帰りました。 っと・・・千鶴一人か?」
「あっ・・・お帰りなさい・・・」
罪悪感から、顔が見れない。
「千鶴、弁当・・・毎日ありがとうな」
差し出されたお弁当箱の中はカラだ。
「あっあの」
「なんだ?」
・・・なにか言わなきゃ・・・なにか・・・
「変なモノ入っていませんでしたか?」
「・・・はぁ?何言ってんだ・・・。変なモン弁当に入れたのか?」
「いや あの えっと ・・・卵の殻とか・・・」
あぁ・・・言っちゃった。
「あぁ なんか入ってたな」
やっぱり!!
「ごめんなさい」
ますます顔が上げられず、深々と頭を下げる。
「ただ飯食らっるのは俺の方だ。気にすんな。それに全部食っちまったよ」
あーどうしよう・・・。
「総司のやつは『怒りっぽい土方さんのために、わざとカルシウム補給に入れたんじゃないですか?』って言ってたな」
うぅ・・・沖田さんの厭味が痛い・・・。
泣きそうな顔を見られたくなくて、ますます顔が上げられない。
そんな私に気を使ってか、土方さんの大きな手が、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。
「千鶴は『ガレット・デ・ロワ』ってお菓子は知ってるか?」
いきなりお菓子の話になったので、きょとんとしながら顔を上げた。
「ホールのパイの中に豆・・・本物の豆の時もあるし、陶器でできた豆とか、陶器の人形とかを入れて、適当に切り分けるんだ。」
土方さんは笑いながら続けた。
「パイの中に豆や陶器が入っていた奴は『アタリ』で、男なら王様、女なら女王様って呼ばれてる。当たった奴は一年間幸福に過ごせるんだと。」
何でいきなりお菓子の話なんだろう?
もしかして・・・この後ブラックな展開なんだ。
あぁ・・・どうしよう・・・。
「だったら、卵の殻が入ってた俺は『アタリ』で『王様』だよな」
「はっはい・・・。何でも言うこと聞きます」
なんだか今日の土方さんは怖い。
意地悪っぽくて怖い。
恐怖のあまりに逃げようとすると、土方さんとシンクの間に挟まれてしまって動けなくなった。
横に移動しようとすると、土方さんの両腕でガードされてまったく身動きが取れなくなってしまった。
どうして?
こんな土方さん見たことがない。
なんで意地悪するんだろう?
土方さんはクスッといたずらっぽく笑って
私の耳元に唇を近づけた。
「俺はどっちかってっと、塩味の玉子巻きより、砂糖入りの甘いやつが好きなんだ。今度から頼むな」
熱い息が私の耳をなで上げて腰が抜けそうだ。
顔が熱くて、お湯でも沸かせそうな気がする。
土方さんはすぐに背中を向けて
「飯・・・頼む」
といつもの通り、ぶっきらぼうに叫んだ。
そんな土方さんの耳も真っ赤で
私は妙に落ち着かなくなってしまった。
土方さんが家に来て1年半。
初めて見た意地悪。
初めて聞いた、お弁当のリクエスト。
今、はっきりと気がついた、自分の気持ち。
私はこの人が好きなんだ。
Tちゃんからもらった宿題
『あなたの玉子巻きの中に卵の殻が入っていました。彼に同じ内容お弁当を渡しています。彼の玉子巻きにも入っているかも。さあどうする。入っているかいないかはわかりません』
のお題の答えです。
初めは「入っていない」が答えでした。
ガレット・デ・ロワの事を思い出したので、「入っている」に変更。
土方さんの意地悪なシチュエーションもなかったのですが
。
千鶴ちゃんの気持ちが
『憧れのお兄さん』から『好きな人』にはっきりと変わるのもいいかなと
。
タイトルはなかなか決まらなくて、いろいろ調べていたら『Magic Word』の事を思い出しました。
子供がおねだりやお願い事をするとき、言わなかったらお母さんが「Magic Wordは?」と聞くそうです。
子供が「Please」と答える様子がたまらなくかわいいと友達が教えてくれました。
どうしているかな なえみちゃん。
しかし土方さんに言われたら、ある意味すべてが『Magic Word』![]()
![]()
よかったら皆様もこのシチュエーションで妄想してください。
持ち帰り自由ですが、ブログに載せるようでしたら「お題いただきました」のコメントをいただけると嬉しいです。