朽ちていく世界と花 | イテルギター教室~人生DIY~

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世界は、力あるものと無いものに分かれていた。
僕はもともと無いものだったのだが、
こっそり龍の糸くずを体に入れたおかげで力を手に入れた。
そのことは誰にも言っていなかった。
力を手に入れたものの、
僕はその力の半端さに悩んでいた。
力はいろいろある。

飛ぶ力。
世界を朽ちさせる花を判別する力。
花によって力をもたない人が朽ちないように守る力。
朽ちていく世界を支える力。

僕はどの力もあり、そして不安定だった。
力を使えるときもあれば
使えないときもあった。

ある日竜の糸くずが体の親指の付け根からはみ出ているのを見た。
僕はそれを、切れないように丁寧に引き出し、そっと宙に放った。
前ほどは力を使えなくなったのだが、
なんだかせいせいした。
ドーピングしないで自分で力を使えるようになった氣がした。

世界には絶え間なく花が生成する。
花には二種類あり
人を朽ちさせる香りの花と
人を生きさせる香りの花と。
そのちがいは、判別する力がないものにはわからなかった。

僕は朽ちさせる香りの花を判別できたものの
時々間違えるので
人には言わないようにしていた。
自分が生きるためにその力はとても便利だったけど
間違えたとき人を巻き添えにするのはごめんだった。

力持つ者は力なきもののために力を使う。
それが暗黙のルールだった。
もともと力を持っていなかったくせに
ズルをして力を得た僕は
力なき人のためにあまり力を使わないことに、
うしろめたさを感じていた。
一方で、人のために力を使うことに苦痛を感じることもあった。
不安定であるゆえに、継続して力を自分のために使うことさえままならなかった。

彼女にそのことを相談したら
「別にいいでしょ。あんたの力なんだから、自由に使って。」
と一蹴された。
彼女は特別強い飛ぶ力をもっていて
朽ちさせる花の影響をほぼ受けない。
力あるがゆえに、朽ちることに対して自由だった。
僕は彼女の生まれ持った力に対して尊敬と羨望があった。
(あんな風に飛べたら、びくびくしないで生きていけるのに。)

世界には次々生成する「ステージ」があった。
ステージとは平面で、次々花が生成する。
ステージにとどまっていると
次々生成する朽ちさせる花によって
身体が朽ちてしまう。
花を判別することができれば
朽ちさせる花のそばにいなければいいので
大丈夫だが、判別の力を持つものは限られていた。

花は地上に生成するので、
飛んでいる者は花の影響を受けない。

ステージからステージへは、
ゲレンデのような
駅のプラットホームへ通じる階段のような
長いスロープがあった。
スロープにも花が生成するので油断ならない。
僕は生成する花が人を朽ちさせやしないか
気を配っていた。

だいたい、朽ちさせる花のそばに人は寄らないので
判別する力ある人のそばに居れば安全だった。

見知らぬたくさんの人たちは
僕の力にうすうす気づいてるみたいで
暗に僕を頼りにしていた。
僕はそれが嫌で、
なるべく人のいないところを飛ぶようにしていた。

彼女と飛んでいたとき、雲の上で僕の力について調べてもらった。
あまり人前に出ないで
コソコソ回復させる力を行使するぼくの力は
「とり」の力らしい。
身軽で脆弱。
納得し、自分の力の使い方を多少、考えるようになった。
使えるときは使い、使えないときは使わない。そんなかんじ。


ステージと朽ちさせる花を生成させるきっかけになった建物があった。
建物は斜めに傾いた地下鉄の入り口のような風体で、
いまにも崩れ落ちそうなのを
世界中の力あるものたちによって形を保っていた。
保つのを止めたとき建物は崩れ落ち世界は朽ちる花で埋め尽くされる。
そう信じられていた。
だから僕も保つ力が使えるときは保っていた。
いつも同じように保てないことに不安を感じながら。

「朽ちさせる花」や「力」がいつどのように生まれたかは、はっきりしていない。
どうやら力を使うほど朽ちさせる花を生成するようではあるものの
明確な因果関係は証明されていなかった。
力を使わなければすぐに朽ちさせる花に埋もれてしまう人たちが大半だった。
僕はそこに大きな矛盾を感じていた。
力なんて使わなきゃいいのに。そしたら朽ちさせる花も生まれないのに。
はっきり言いきれない自分にモヤモヤしていた。
でも力を使わないと自分も世界も朽ちると思って、
使うのを止められない。
世界は力を使うこと前提に成り立っていて
朽ちさせる花のそばにいなければいいだけ、ということになっていた。

こないだ、「熱線」の力を使ってしまった。
空を見ていたら光る眼が接近してきて、それが敵だと僕は一瞬で判別した。
身体の熱を凝縮して遠くに飛ばすのが熱線。
一発目はけん制に軽く飛ばした。命中。効いてない風だった。
相手から熱線がかえってきた。
僕には当たらなかったが、結構な熱量だった。
空中で、相手は僕のそばを旋回していった。
遊ばれてる。
今度は渾身の熱を込めて飛ばした。命中。効いてない。
こりゃやばい。
腰が引けている僕をよそに、相手はまた僕のそばをすりぬけて、
飛んで行ってしまった。
何だったんだ。
その日以来まだ僕は熱線の力を使ってない。
強い力ほど、ろくなことにならない氣がして。


大勢を巻き込んでイベントがあった。
力ある「怪人」たちがやってきて力ないものを貪り投げるイベント。
「力」を使って投げるんだから、結果は無残だ。
いつどこに来るかわかってるので、
対抗策として「守る側」の長老がルールを設けた。
・投げるのは西から東へ。
・死なない程度に加減すること。
来てみたら、ルールなんて守らなかった。
カタマリになったイナゴの群れみたいにやってきて、
ちぎっては投げてった。
僕はなすすべもなくって、隠れてみていた。
止めることも救うこともできなかった。
投げられていくのを正視できなかった。
長老たちは憤慨しながら投げられたひとを受け止めていた。
投げている側は野球かアメフトの試合でもしてるみたいに
真剣に楽しそうだった。
僕は怖かったので「会場」の角の塔に隠れて本を読んでいた。
塔の本棚に、力の使い方のヒントになりそうな本があった。
きいたことのある名前の人が書いた本。
まだ誰も読んだことがないらしきその本を1冊、僕は無断で借りていった。


仲間たちと和菓子屋さんに行った。
お菓子屋さんのガラス張りの向こうに、
昔の友達が職人として働いていた。
懐かしかった。
ガラスの向こうから、懐かしそうに声をかけてくれた。
和菓子は人気だった。
カタログには、偉い人が結構買いに来るらしいことが書いてあった。
僕はそんなに好きじゃなかったけど。
薄紅色の饅頭にたっぷりあんこがつまったのが人気だという。
一緒に来た友達は串に刺した緑色のお菓子を注文していった。
1串できるたびにリレーして袋に入れていく。
僕も中継して袋に入れてった。
あとでいっしょに食べるんだって。


妹のところにあそびに行ったら、ギターを見せてくれた。
いくつかあったうち、僕は使い物にならないのを見つけた。
手を加えれば何とかなりそうだった。
妹は、あとで僕に力を借りる代わりにそのギターをあげると言った。
力を使うのは氣がすすまない。
だいぶギターをもらう氣が失せたのだけれど
半ば押し売りされるように僕はギターを受け取った。




























という夢をみた。
ぜんぶみた夢をそのまま書いた。
荒唐無稽なファンタジーのようであり、
世界の行く末を暗示しているようでもある。
夢見る力を磨いていったら予言の一つや二つできるかもしれない。