12月のとある土曜日。
俺たちはとある温泉地に遊びに行っていたんだ。
まさかそこであんな事件が待ち受けているなんて誰も想像していなかった…。



俺たちは連れだってとある温泉地に降り立った。
天気はあいにくの雨。
観光目的の俺たちはがっくりと肩を落とした。

しかし、一番の目的は温泉。
この世知辛い社会をなんとか生き抜いている俺たち。
そんな俺たちを癒してくれる至福。それが温泉。

温泉への期待に胸を膨らませ、ホテルへと向かった。
ホテルに到着し、さっそく温泉へ。
大浴場へ向かう。

至福。まさに至福。
そこにはただただ温泉、それだけがあった。

世間のしがらみ。恨みつらみ。
そんなものは何もない。
ただ、温泉だけ。

そんな至福を楽しんだ俺たちは、さらなる癒しを求め、夕食へ。

夕食は鍋がメイン、のはずだった。
しかし、ビュッフェ形式の夕食であったために、みんな我を忘れていた。
サラダだチキンだ肉だ魚だ、と。
鍋の事など半ば無視。

鍋の味が正直イマイチだったのは否定できない。
しかし。
メインとされている以上、食べてあげるのが、漢(おとこ)。

もはや厄介者と化していた鍋を、愛情と憎しみを精一杯こめて食べつくす。
ごっつぁんです。



さて、とっておきのイベントへと。
ホテルについている貸切風呂。

普通、貸切風呂と言えば。
家族でワイワイ。カップルでイチャイチャ。これが定番。
しかし。
俺たちは違ったんや。

男、男、男。
男のみ、6人で貸切風呂。
見るに堪えない男感。

そして、そんな貸切風呂で事件は起こったんや。


すこし遅れて貸切風呂へ到着したワイ。
既に先発隊の3人は風呂へ到着済み。
すると、なにやらキャハキャハと声が。

これは、男だらけの現状に危機感を感じた先輩方が麗しき女性たちをスカウトしてきたのでは、と推測。
喜び勇んで風呂場へと突入。
待ってろ女子!!

…そこに待っていたのは、やはり男。
男の裸が3人前。
…結構です。

しかし、ならば何故にキャハキャハ声?
その理由はすぐに判明。

先着していた先輩方は踊り狂っている。
いや、よく見ると、お湯をかき回している。
そして、そのお湯に出たり入ったり。
なんや?

理由はひとつ。
お湯が、熱い。
それも、尋常ではなく。

溢れたお湯が足をかすめるだけで悶絶するほど。
熱湯コマーシャル顔負け。


特攻隊長の俺は、果敢に攻めた。
足を、浸けた。
足を刺すような熱さと痛みが襲った。
すぐに、お湯を出た。足が、ジンジンと痛んだ。

男たちは、団結した。

蛇口を、ひねった。
水が出た。
誰かが、叫んだ。
水だ、水が、出た。

しかし、プロジェクトX風に言ってみたところで、お湯は冷えない。
シャワーと蛇口の二段構成で、お湯を冷ます作戦に。
しかし、温泉のシャワーは出しっぱなしにできない。
足でレバーを押しっぱなしにする。
全裸の30近い男たちが、片足を上げ、シャワーをお湯に向ける。
なんとも壮観、そしてなんとも痛ましい。

誰かが、叫んだ。
シャワーで冷えているところに入れ!!
俺は、勇気を振り絞って、入った。
熱く、なかった。
そして叫んだ。
シャワーで冷やしたところに、入れ。

次々と勇気を振り絞った全裸の男たちが湯船へと入る。
水のシャワーを上半身に浴び、凍えながらも、下半身は灼熱。
天国と地獄、いや、地獄と地獄。
そんな仕打ちに耐え、男たちは湯船に浸かった。
そこには圧倒的な一体感と充実感があった。

一人が、言った。
俺たち、やったんだな。
誰かが、言った。
そう、やったんだ。

風の中のす~ばる~
砂の中のぎ~んが~


プロジェクトX ~貸切風呂に挑んだ男たち~