母が逝ってしまってから、なんだかぼんやりした日々を送っていて、出来事をうまく振り返ることができない。
いつものように、また「おはよう!」なんて電話がかかってくるような気がしてならない。
どうにかもう1回話がしたいんだけど、どうすればいいんだろう。
とりあえず、母と一緒に出掛けることにした。海へ。
見えないけど、母はちゃんと一緒にいるはず。「一緒に海に行こう」って誘ったから。
富士山はくっきりと浮かび上がり、海は凪いで美しく輝いていた。
たくさんの小魚が群れになって泳いでいた。

消えていく命と、新しく始まる命。
そういう命で満ちているこの世界。
体が弱かった母は、枷となっていた体を脱ぎ捨てて、魂になってのびのびとしているのかな。
「おかあさん、うねりが来るよ」。カヤックを漕ぎながらおかあさんに私の海を見てもらう。
母が生きているときには、母をカヤックに乗せたりするのは無理だったなー。
「あれが尾が島」「ほら海草がゆらゆらしてるよ」「お魚だ!」「サンゴイソギンチャクがいるよ」「潮風が気持ちいいね」
矢継ぎ早に母に話しかけてみる。
返事は聞こえてこないけど、きっと母は一緒にカヤックに乗っているはず。
おかあさん、今度は一緒にサーフィンしようね。
サーフボードに乗せてあげる。