ずいぶん前のこと、ダンナが山地酪農の本を買ってきて「こんな風に生産されている牛乳があるんだね~」なんて感心していたので、私もつられて本を読んでみた。
 
この山地酪農では、山に乳牛を放牧して、牛たちはそこに生える芝や笹、野草なんかを適当に食べ、湧き水を飲み、歩き回ったり、走ったり、寝転んだり、はたまた草を食べたりしながら、自分たちのペースでのびのびと暮らしている。
 
冬でも、天気の悪いときでも、ずっと山で過ごして、基本的に牛舎には入らず、自然の中で牛たちは暮らしているらしい。ただ、そこは酪農牧場なので、牛乳を生産しなければいけない。というわけで、搾乳の時だけ人の手を借りるという、きわめて野生に近い飼育で牛乳を生産しているのが山地酪農なのだ。
 
自然の中で暮らす牛たちが出す牛乳は、季節の草によって味が変わるのだとか。そんな牛の牛乳をぜひ飲んでみたいと思ったけど、そういう酪農は日本では許認可の関係でなかなか難しいようで、生産量もかなり少ないし、仕事として成りたたせるのが難しそう。
 
日本にまだ数ヶ所しかこういう酪農牧場はない。その中でも有名な山地酪農の牧場があるのが岩手県の山の中。10月被災地に行った帰り、沿岸部から新幹線に乗るため内陸へ移動したので、その帰路の途中に山地酪農の農場を2ヶ所訪ねてみた。
 
まず、最初は海からちょっと山側に入ったところにある吉塚牧場。ここは、近所にもう1軒ある山地酪農牧場と共同で、「田野畑山地酪農牛乳」を生産しているところ。
 
 
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          http://yamachi.jp/index.htm  (←田野畑山地酪農牛乳HP)
 
電話で見学をお願いして出かけたので、オーナーと2代目の息子さんたちが予定を開けて、牧場の山を案内しつつ、山地酪農の話をいろいろ聞かせてくださった。
 
この牧場オーナーの吉塚さんは千葉県出身で東京農大卒。日本の山地酪農の創始者・猶原恭爾(なおはらきょうじ)博士の教えを受けて、この道に入られたのだとか。
 
秋が深まり行く途中の、美しい彩りの山の切り開かれたエリアに、ぽつぽつと牛の姿が見えた。ここにで牛たちが、ほんとうに気ままに草を食べたり寝転がったり。広い牧場の中の好きな場所に移動して、いい風に吹かれながら幸せそうな顔をしてくつろいでいる。
 
放牧によって乳牛は野生を取り戻し、足腰だけでなくお腹の中まで丈夫になり、草で栄養をまかなえる胃袋になるとか。草も自分で歩いて、善し悪しの判断をして食べる。
 
日本の乳牛は生まれて3年目には母親になり、乳を搾れるようになるけど、5~6年で生涯を閉じるのが普通。しかし、山地酪農で買われている乳牛は、16歳~18歳まで現役でいるという。これが牛の本来の命の長さなんだろうな~。
 
広い牧場の斜面を、日差しを浴びながらオーナーや2代目息子さんたちとぷらぷらあるいて、木の実を拾ったり、青空を見上げたり。なんて気持ちいい牧場。
 
こうして牛が山に入ると、下草を食べて、藪だった山がきれいになる。そうなると、手入れできずに山がだめになるということも無くなり、一石二鳥じゃない。山がちな日本。こういう酪農があちこちに広まれば、放置された山林が活用されて、しかも安全で美味しい牛乳も飲めて言うことなしだと思うんだけど。
 
私も牛に生まれたら、山地酪農の牧場で暮らしたい。きっと、牛舎で飼われている牛たちはみんなそう口をそろえるに違いない。
 
こんな幸せそうな牛たちが出す牛乳が、おいしくないわけがない。というわけで、さっそくオーナーのご自宅にお邪魔して、自慢の牛乳を飲ませてもらった。
 
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甘い。そして滑らかな舌触り。少しお日さまのにおいがするような上等な牛乳。幸せの味。こんな牛乳を飲んでいたら、きっと気分が晴れ晴れしてくるだろう。
 
この上等な牛乳を、近隣の町や村に宅配しているという。1リットル350円ぐらいと破格の値段。みんなにたくさん飲んでもらいたいから、値段を安く抑えているのだとか。
 
これだと、大量生産される牛乳より、ちょっと高いぐらい。近くなら、私も宅配してもらいたい!でも、そんなわけにもいかないから、そういう時はクール宅急便。送料が高いので、仲間を募ってまとめ買いしないとえらく高い牛乳になりそうなのが、ちょっと残念(涙)。
 
ま、近所の仲間を募って、ときどき美味しい牛乳を飲みましょかね。