母の家は古くから神官や学者という家で、古文書をはじめ古いものがいろいろ残っていた。
その母の実家は、実は分家で、本家から分かれてから800年ほどになるというのはよく聞かされていた。母の家の墓所には、代々のご先祖のお墓がならび、墓所をぐるりと回ると家の歴史がわかる。
分家が800年なら本家は?と思って母に聞いてみると、初代のご先祖が、奈良から命を受けてこの地にやってきたのが1300年前だそうだ。その初代が葬られている古墳が、本家八幡宮の参道脇にある。今残っているのは円墳のみだが、ひょっとしたら前方後円墳だったかもしれないとも聞いた。
本家で、毎年ご先祖を祭る古墳のお祭りをやっていいのかどうか、神様に卦を立てていたところ、ようやく今年お許しの神託があったのだとか。この時代に、こういうことで物事が進んでいくことの不思議さに感銘を受ける。
で、このご先祖のお祭りに出ようと思ったのだが、子どもの学校のスケジュールでどうしても当日までいられないことがわかり、その前日に本家を訪れて、子どもたちに1300年前のご先祖の古墳を見せることにした。

子どもたちは古墳を開けるのかなと期待していたようだけど、今回はご先祖の魂を慰めるお祭りをするだけ。この古墳、一度も開けられたことはない。中にどんなものが埋蔵されているか、とっても興味があるけど、そういうことは、もっと時を待たなければいけないのだろう。
本家は私のふるさとの町から40kmほど離れた山間の静かな町にある、古くてこじんまりとした八幡宮だ。800年前に枝分かれした本家と分家。どちらも神社を守る神官の家なので、それなりに行き来はある。私も子どものころから何度かは本家の八幡宮に遊びに行ったことがあった。

母の実家でもかなり古い家だと思っていたのに、本家の古墳に眠る最初のご先祖が神官として奈良からやってきたのは和銅2年(709年)。
この下向にともない、16人の古神官とお供の人たちが、初代が下向する1年ほど前からこの地に赴き、神社を建立するにふさわしい地を選定し、準備を整えたと記録に残っている。
この古神官というのは、初代の部下のような人たちだったようだ。古神官16人がこの神社に仕えるという伝統は今も続いていて、現在も古神官と呼ばれる16人の世話役がいる。
1300年もの時を包み込んだ八幡宮は、なんともすがすがしく、浮世離れしたような時間の流れを感じる。

久し振りに訪ねても、すーっと空気が馴染んでいくような感じ。ここを訪れると、ふるさとに戻ったような、ふんわりとしたなつかしさが胸を満たしていく。
子どもたちに、こういう気分が伝わればいいけど。