
以前、クスノキの薪を軽トラ2台分運んできてくれた工務店の親方だった。また木を切りに行くので持って来ようかと聞きに来てくれたのだ。
ありがたい。この冬の薪は一応準備してあるけど、足りるかどうか不安だった。だんだん涼しくなってきて、そろそろ薪探しをしなきゃと思い始めていたところだったのだ。さっそく、お願いしますと頼むと、今回はタブの木をもってきてくれるという。
夕方5時過ぎ、少し暗くなりかけたころに軽トラでやってきた親方。職人だから、一見気難しくてとっつきにくそうな雰囲気。
来てすぐ「車止め!」と一言。我が家の前の私道は坂道なのだ。だから車止めがいるということなのだろう。助手席に座っていたもう1人のおじさん(あきらかに部下という態度だった)が、すばやく車から降りて、積んできた枝をタイヤの後ろに差し込んだ。
「そんなもん、ダメに決まってるだろ!」と親方。こ、こわい。私も一緒になってウロウロと車止めになりそうなものを探す。四角の材ならいいというので、柱の木切れを差し出したら「そんないい加減なもん、ダメだ」とさらにダメ出し。
親方は厳しい。それでも部下のおじさんは口答え一つせず(えらい!)、我が家の庭をごそごそと探し回って、なにか使えそうなものを引っ張り出してきた。それが合格してほっと胸をなでおろす。
親方が怖いので、ただ突っ立って見ているわけにも行かず、手袋をして、私も丸太運びに参戦。腰が悪いので、重いものは持たないように、慎重に選んで運んだけれど。
一緒に作業をやっているうちに、親方がだんだんほぐれてきて、世間話を始めた。ほんと江戸っ子の職人のような人なのだ。葉山生まれの葉山育ちだけど。ミカンハウスを見て、「木の家はいい。ほんとうに落ち着ける」と何度も繰り返した。
きっとこんな家が好きだから、薪を運んできてくれるのかな。そして、タブの木のことを「テカテカ燃えるいい木だ」と説明してくれた。テカテカ燃えるって、なんかいい言葉。あったかい炎がゆらゆらと見えてくるような、そんな言葉。
タブの木って、クスノキ科の常緑高木。海の近くの温暖なところに生えるのだとか。つまり、この町にぴったりの木。
「1年寝かせて乾燥させなきゃいけないんですよね」と聞いたら、「そんなことたぁーしなくていい!」と一言。
2ヶ月も置けばすぐ燃やしていいとのこと。薪もかんかんに乾燥させたものばかり燃やすのではなくて、生乾きのものを半分ぐらい混ぜて燃やした方が火持ちがいいとのこと。
へえー、そうなのか。いろいろ勉強になるなー。つまりタブの木も、この冬には薪として燃やしていいのだ。するとテカテカといい炎を見せながら、暖かく燃えていくのだろう。
この町の、小さな工務店の親方と、ひょんなことで繋がった細い糸。その親方が、町のどこかの庭から切ってきたタブの木の丸太。テカテカと燃えるタブの木。この冬、タブの木の薪をくべるのがすごく楽しみになってきた。