




前の晩、グランドスパから戻る頃には、少し船が揺れはじめていた。でも、これは船が穏やかな陸奥湾を出て津軽海峡に差しかかったから。
夜中の12時頃ベッドにもぐり込んだのだが、大シケの海に突入するという思いが頭の中をぐるぐる駆け回り、どうも船の揺れが気になってしょうがない。
ぐらっと来ると、すわ、シケか!と緊張が走り、眠るどころではない。しだいに船の揺れは大きくなってくるようで、うとうとしては目を覚まして、波の音に耳を澄ますという繰り返しだった。
やっぱ、キャプテンの言うことは正しかった。「大シケの中を航海します」と言ったとおりになったじゃない! 本当に船が大きく揺れている。ふわっと宙に浮いたような感じがして、次にドスンと激突するような衝撃音と響かせながら落ちていく。
ああ、飛鳥Ⅱはついにシケの海に差しかかったのだ。座礁・・・転覆・・・、悪いことばかりが頭に浮かんでくる。でも、これだけの乗客を乗せて航海しているのだ。危ないなら出港するはずがない。確実に乗り切れると保証があるから、大シケの中を進んでいっているはず。
というわけで、いろんな思い、特に遣唐使がどんなに大変な思いで中国大陸に渡ったか。勝海舟やジョン万次郎の船旅がどんなに辛かったか。なんでもいいのだが、もっと大変だったろう航海を脳裏に浮かべながら、もうろうとして朝を迎えたのだった。
明るくなると、やはり気分が少しは持ち直す。船は相変わらず揺れ続けているけど、外に人の気配もするしキャプテンからのアナウンスも入り、「引き続き飛鳥Ⅱは大シケの中を航行しております。このシケは1日中続く予定です。船が揺れておりますので、乗客のみなさまは、転んだり、急にばたんと閉まってくるドアに腕や指を挟んだりしないように気を付けてお過ごし下さい」とのこと。
今日はどこにも立ち寄らず、一日中クルージングする予定だ。なので、船内イベントも盛りだくさん用意されている。こんなに揺れてもやるのかなと思ったら、クルーはみんな涼しい顔で準備に余念がない。さすがに外デッキで行われる予定のものは中止になったが、船内イベントはみんな予定通り。
昨晩の薬が効いたのか、幸い船酔いもせず、朝ご飯を食べに行って、まず、母とスカーフの結び方教室に参加した。これは、いろんなタイプの結び方インストラクターが丁寧に教えてくれるのだけど、やはり、不器用な私には難しい。それから船内ショップにお土産を買いに出かけた。毎日ショップに来ているけど、いろんな品物があって見飽きない。
お昼はビュッフェで洋食のバイキング。この日はフルーツを中心に食べる。午後からはソムリエの田崎真也氏の講演に出かけた。青森から乗り込んで、次の寄港地清水で下りるようだ。「こんなシケた時に呼ばれて・・・」などとぼやきながら、ワインに絡めたいろんな話が結構おもしろい。講演慣れしているのね。
その後はイヤリング作り教室に参加。これは結構揺れている中、細かい作業となるので「下ばかり向いて根を詰めると酔いますので気を付けて」と言われた。それでも、何とか自分の分は完成。
夕方になると恒例のお着替えタイム。この日はインフォーマル。というわけで、ロングドレスに着替え(今回は3着ドレスを持ち込んだ)、しずしずとお出かけ。今夜のショー(プロダクションショー)を見てからディナーへ。
この頃になると、揺れが少しづつ収まってきているようだった。食後にカジノへ行ってルーレットでしばし遊び、その後、パームコートというラウンジに行って、その日のオリジナルカクテルを飲みながら、しばしバンド演奏でくつろぐ。
大シケで揺れているわりには、食事も出来たし、イベントにも参加できた。つまり船酔いしなかったというのが大きい。揺れていても遊べるというのが大事よねー。こんなにシケた海での航海を経験すると、もうどこでも行けそうな気がしてきた。さあ、ワールドクルーズでもなんでも、どんと来い!