△新会社の設立に動き出す岩村監督

福島民報(11月17日付)の1面に「福島レッドホープス来期始動」という記事が掲載された。
《プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの福島ホープスを運営する福島県民球団(扇谷富幸社長)は16日までに、今期限りで事業を終了する方針を固めた。来期以降は岩村明憲監督(39)を代表とする新会社が球団運営を担い、球団名を「福島レッドホープス」に一新して存続させる方針(以下略)》
福島民報が県民球団の経営問題を取り上げたのは、 今回が初めてだ。従来は県民球団の株主という立場もあって、沈黙を守っていた。10月2日付で「ホープス運営の福島県民球団、事業譲渡へ、岩村氏ら中心新会社が」と報道した福島民友新聞とは対照的だった。このため、民報の一部読者(民報オンリーの人やネットをやらない人)は、県民球団の経営難を知らないままだった。

△「ホープス」というチーム名は変更

11月22日に四国IslandリーグplusとBCリーグの合同ドラフト会議が行われるので、それまでにチームを存続させるのか解散させるのかを明確にしなければならない。逆算すると、19~20日がそのタイムリミットになる。17日に民報が「福島レッドホープス来期始動」と報道したのは、それを踏まえてのことだろう。
チーム運営の見通しが立てば、ドラフト会議への参加は認められるはずだ。そうなれば、2019年もチームはリーグ戦に参戦できる。被災地の福島県にあるチームが解散したら、BCリーグ全体のイメージが悪化する。リーグ側が脱退勧告をするとは思えない。

△カメラに笑顔を見せる久岐と長嶺

県民球団の経営難については、本ブログが3月23日付で取り上げた。当時、ファンの間では県民球団の経営難が公然の秘密になっており、極端に言えば、チームの勝敗より存続策に関心が集まっていた。「2018年シーズンを乗り切れるのか。リーグ戦の途中で解散もありうるのではないか」という悲観的な見方もあった。
結果として、リーグ戦の途中で解散という最悪の事態は回避された。しかし、経営難が解消されたわけではなく、チームが危機的な状況にあることに変わりはなかった。

△信夫ケ丘球場で素振りをする選手

BCリーグの公式戦では、外野フェンスにスポンサー企業の横断幕が掲示される。レフト側にリーグ全体のスポンサー、ライト側に各チームのスポンサーという色分けがある。
ホープスのホームゲームでは過去3年間、ライト側の左端(バックスクリーン寄り)に「ブロス」の横断幕が掲示された。扇谷富幸球団社長が経営する扇(郡山市)のブランド名だ。しかし、2018年はその横断幕がなくなり、扇がスポンサーから撤退したことを印象づけた。これは実質、扇谷が球団運営から外れたことを意味する。
「扇谷社長は今年、球団社長をずっと続けていました。辞任したくても、借金まみれの球団を引き受ける人がいなかったので、辞任できなかったんです。運営には一切タッチしませんでした。名前だけの社長です。球団は事実上、倒産状態に陥りました。抱えた借金を全て返済するのは不可能。一方で、球団を潰すと、扇谷社長本人が一番の被害者(債権者)になります。球団に貸したお金が返ってこなくなるからです。扇谷社長は球団を潰したくても潰せなくなったのです」(ある事情通)

ホープスは2018年、東地区通期勝率が2位だった。優勝は前後期とも群馬ダイヤモンドペガサスだったので、規定によりホープスがダイヤモンドペガサスと共に東地区チャンピオンシップに進出した。通期勝率2位のチームが地区チャンピオンシップで優勝するためには、3戦3勝が条件になる。1分けもできない。しかし、ホープスは初戦で引き分けたため、その時点で敗退が決まった(延長12回まで戦って0-0)。

△県営あづま球場に入場するファン

リーグ戦の日程が終了すると、新聞各紙(民報除く)は県民球団の経営難を報道し始めた。口火を切ったのは、スポーツニッポン福島版(10月1日付)の小さな記事だった。
《BCリーグ東地区の福島ホープスを運営する福島県民球団が30日で倒産し、新しく経営母体となる新会社の代表取締役に岩村明憲監督(39)が就任することが分かった。(中略)現在の球団名の「ホープス」は福島県民球団と結びついているため、来年から球団名を変更する可能性があるが、球団自体は消滅しない》
「30日で倒産」は先走った書き方だったが、他の記述に間違いはなかった。民友が翌2日付でこれに追随し、前出「岩村氏ら中心新会社が」という記事を掲載。これにより、県民球団の経営難は広く知られることになった。

岩村は10月3日、内堀雅雄知事に2018年シーズンの成績を報告するため、県庁を訪れた。過去3年間は扇谷も同行したが、今年はしなかった。
報告の後、岩村は取材陣に対して「この半年間、扇谷社長とほとんど連絡がとれていない。弁護士を通じてやりとりしている」と明かした。球団社長と球団代表兼監督が顔を合わせることもできなくなったというのだ。こうなると、会社としては末期的な状態である。

△ファンにあいさつする宮之原

福島ホープスは10月14日、鏡石町の岩瀬牧場で「2018チャリティーファン感謝祭」を開催した。この中で、ステージに立った岩村はファンに次のようにあいさつした。
「今、みなさんが一番聞きたいのは、チーム存続に関してのことだと思います。僕がやっている以上は続けます。僕は福島県民ではありませんが、今、福島ホープスを潰してしまうと、福島県民の恥になると思います。そのくらいのプライドを持ってやっています。
先日、内堀知事ともお話をしました。2020年の東京オリンピックで、この福島でも野球・ソフトボールがあります。それに携わっていけるのは唯一、福島ホープスだけだと思っています。もちろん、他にもいろいろな役割があります。復興の加速、風評被害の払拭、実際に住んでいる人の娯楽、ストレス解消…。そうしたことを念頭に置きながら、前に進んでいきたいと思います。
今現在、代表取締役社長の扇谷は、自分と全く連絡がとれていません。ただ、弁護士を通じて会話ができています。その中でしっかりとした形ができれば、改めてみなさんの前で記者会見をして、新たなスタートを切りたいと思います」(ブログ「福島ホープス観戦記」がインターネットに公開した動画を文字おこし)

△チアリーダー「ホープスガールズ」

これは、岩村自身が主体になってチームを存続させるという決意表明だ。ただ、岩村がいくら意気込んでも、扇谷がチームの運営権を譲渡しなければ空振りで終わってしまう。弁護士を通じてやりとりしているというのは、その件についてと見られる。
岩村はファン感謝祭で「しっかりとした形ができれば、改めてみなさんの前で記者会見する」と述べた。ドラフト会議が22日にあるので、新体制についての記者会見は19~21日のいずれかに行われる可能性が高い。

【文と写真】角田保弘