昨年9月、帰宅すると、ポストにカラフルなパンフレットが入っていた。冒頭に「テレビに関するお伺い」というタイトルがあり、下の方にビデオリサーチという社名が記載してあった。
《このたび、この地域にお住まいの皆様にテレビに関するお伺い調査へのご協力をお願いにまいりました。この調査は、各地区の全ての世帯から無作為に選ばせていただいたご家庭にお願いしており、テレビに関することや家族構成などをお伺いし、弊社の各種メディア調査の基礎資料作成を目的として実施しております。突然のお願いで大変恐縮ですが、資料をご覧の上、調査にご協力くださいますようお願いいたします》
ビデオリサーチは、メディアに関する各種統計調査を実施する会社だ。本社は東京都千代田区にあり、在京キー局や広告代理店などが株主になっている。事業内容で最も有名なのは、測定機器によるテレビ視聴率調査だ。「視聴率○%(関東地区)」というデータは、この会社が発表している。このほか、CM認知度調査、タレントイメージ調査なども実施している。

パンフレットに9月×日に「調査のご協力をお願いするために、弊社の調査員が訪問させていただきます。担当調査員・山下(仮名)」と書いてあった。テレビについては言いたいことがあったので、調査に応じることにした。×日は朝から家にいて、調査員が来るのを待った。1時間経過、2時間経過…。夕方になっても調査員は現れず、すっぽかしを食らう形になった。

私はテレビがないので、必然的に番組を見ない。ロンドンオリンピック、ソチオリンピック、サッカーW杯ブラジル大会、話題になった「あまちゃん」「半沢直樹」も見なかった。最近はテレビでどんなコマーシャルが放送されているのか、さっぱり分からない。ただ、2013年のプロ野球日本シリーズ「東北楽天×巨人」の第7戦だけは見た。Kスタ宮城に隣接する陸上競技場のパプリックビューイングで…。テレビに関しては、完全な浦島太郎である。番組の感想を質問されても回答できないが、「テレビを見ない理由」はいくらでも話せる。それも調査の対象になるのではないかと思い、調査員の来訪を待ったのだ。

パンフレットの裏側に「この調査についてのお問い合わせ先」が記載してあった。福島県在住者の連絡先は「東北支社」で、その下に「0120ー(略)」という電話番号があった。言いたいことを言わないとストレスがたまるので、電話をかけてみた。
電話に出たのは女性だった。内藤(仮名)と名乗った。
私が「ポストに御社のパンフレットが入っていたので、電話をかけてみました」と言うと、彼女は「ありがとうございます」と返答し、その上でビデオリサーチが何の会社であるかを説明しようとした。「視聴率などを調査する会社ですよね? その程度は知ってます。改めて説明する必要はありません」と遮ると、彼女は再び「ありがとうございます」と返答した。

私が「テレビないんですけど、調査対象になりますかね?」と聞くと、彼女は「なります」と回答した。ただ、よくよく聞いてみると、ビデオリサーチは調査対象になりえる人を選出するために、自社のパンフレットを無差別に配布していることが分かった。「パンフレットを目にした人がビデオリサーチに電話をかける→ビデオリサーチが名前・住所・年齢・職業・電話番号・家族構成を聞く→その中から調査対象になりえる人を選ぶ」という流れだ。
どの家にどんな人が住んでいるのか、役所でもなければ分からない。今は個人情報保護法があるので、民間企業が役所から個人情報を入手するのは難しい(昔はそれをやっていた)。だから、ビデオリサーチはこんな面倒なことをやっているのだ。
彼女はこうした流れを説明したうえで、「名前や住所などをお聞きしてもいいですか」と言った。私は「いいですよ」と回答した。

私は前述したようにパンフレットを見て、ビデオリサーチに電話をかけた。言いたいことがあったからだが、そんな物好きは少ないはずだ。そこで、彼女に「御社に電話をかけてくる人はどのぐらいいますか。割合的に言えば、少ないのではありませんか」と聞いてみた。彼女は「そうですねぇ…」と曖昧な返事をした。そのニュアンスからすると、やはり少ないようだ。
調子に乗った私は、次のように言った。
「NHKはテレビがない私に受信料を請求するんですよ。携帯電話のワンセグ機能も受信料の対象という理由で…。ひどいと思いませんか。私の家は、山の陰にあるんですよ。先ほど言った住所がそれを示しています(山の陰であることをイメージさせる文字が入っている)。そのせいか、電波の受信状態が悪く、映像がすぐに固まるんですよ。見るとストレスが溜まるので、『使い物にならない』ということを確認して、それ以降は見なくなりました」
彼女は「携帯電話のワンセグ機能も受信料の対象なんですか。初めて知りました」と驚き、個人的な見解を口にした。それについては、いろいろと差し障りがあるので省略する。

彼女のしゃべり方は東北弁とかけ離れていた。関西のイントネーションだったのだ。関西出身で、たまたま東北支社に配属されたのだろうか。それとも関西支社から東北支社に異動になったのだろうか。そんな疑問を抱いたが、口には出さなかった。
パンフレットには東北支社の住所が記載されていなかった。フリーダイヤルの電話番号があるだけ。ネットで検索すれば判明するだろうが、とりあえず彼女に聞いてみることにした。「仙台」が共通の話題になると思ったからだ。
「ところで、東北支社って、どこにあるんですか? 仙台ですよね?」
すると、彼女は戸惑ったような声で「ちょっとお待ちください」と回答した。
「ちょっとお待ちください? どういうことだ? この人は自分の勤務地がどこにあるのか、知らないのだろうか。関西支社から東北支社に異動になった直後だとしても、仙台ということは分かるだろうに…(笑)」

約30秒後、彼女は「お待たせしました。東北支社の住所は仙台市青葉区○○です。私は大阪にいるので、よく分からないんですよ」と言った。大阪? 東北支社に電話をかけたのに、なぜ、大阪なのか。
彼女「パンフレットには各支社の電話番号が記載されていますが、それらは全て関西支社につながるんですよ。今回の調査の担当が関西支社なんです」
私「あっ、そうなんですか。なるほど。だから、関西のイントネーションなんですね」
彼女「分かりますか」
私「そりゃ、分かりますよ」
彼女「失礼しました」
私「最近は福島にも復興関連で関西の人が来ています。私も何人かとしゃべりました。関西の人はノリがいいですよね。あなたもそうです」
彼女「えっ、そうですか(笑)」

あれから約半年が経過した。住所や電話番号を教えたのに、ビデオリサーチからは何の連絡もない。どうやら、私は調査対象になりえないと判断されたようだ。テレビがないので、まあ、それも仕方がない。「テレビを見ない理由」は今後、このブログで言いたいと思う。

【写真】
・ビデオリサーチのパンフレット