11月3日に福島市の駅前商店街で行われた「第9回ももりんダッシュNo.1」。この大会の呼び物は、福島県内の放送局に勤務するアナウンサーが出場する「キャスターダッシュ」だ。2009年に始まったもので、今年が7回目となる。過去を振り返ると、早口言葉を交えたり、自転車で競走したこともあった。学生が座ったキャスター付きの椅子を押してタイムを競ったこともあった。そのものズバリの30㍍走では男子が有利すぎるので、プラスアルファの要素を加えて、女子でも勝てるようなルールにしている。今年は果たして、どんなルールになるのか。
午後1時ごろになると、カラフルなスポーツウェアに身を包んだ各局のアナウンサーが姿を現した。とはいえ、私はテレビを持っていないので、顔を見ても名前は分からなかった。テレビカメラを持った人が近くにいたので、とりあえずアナウンサーということは察知できた。その後、それぞれが胸に会社名の入ったゼッケンをつけたので、「この人は○○テレビのアナウンサー」ということが分かった。

午後1時20分。レースに出場するアナウンサーが1列に並び、田嶋和也(東邦銀行陸上競技部)のレクチャーを受けた。人数は5人(男子2人、女子3人)。その周りにもテレビカメラの列ができた。夕方の情報番組で撮影映像を流すらしい。昨年までは6人が出場したが、今年は1人少なかった。欠席したのはラジオ福島のアナウンサーだ。
そういえば、今大会は深野健司(ラジオ福島アナウンサー)も不在だった。深野は第1回大会から川本和久監督と一緒に司会を務めてきた。深野がツッコんで、川本がボケるというのが、いつものパターン。今年はツッコミ役がいないので、どうも味気ない。
川本は毎週火曜、深野がパーソナリティを務める番組「朝から全開」に出演(録音)している。大会当日の3日(火曜)も出演したので、両者の関係が悪化したわけではない。今大会でも、コースの横にラジオ福島のアドボード(広告看板)があった。それなのになぜ、ラジオ福島勢は欠席したのか。理由は分からない。

競技の開始前、アナウンサーたちは紙とペンを手にして、お互いを取材し合っていた。何のためにそんなことをしているのか、その時点ではさっぱり想像がつかなかった。
競技開始は午後1時45分。その直前、川本はこう言った。
「男女が同じ条件でタイムを競ったら、結果は見えています。私は女性にやさしいので、男性にハンディをつけます」
男子アナ2人の前に小さな箱が運び込まれた。中にピンポン玉が10個入っており、表面に0~9の数字が書いてある。男子アナ2人は、箱の中に手を入れて、ピンポン玉を1個取りだす。そこに書いてある数字が男子アナのハンディになるというルールだ。数字が5なら、ハンディは0・5秒となる。
最初に「FCT(福島中央テレビ)」のゼッケンをつけた男子アナが箱に手を入れ、ピンポン玉を取りだした。6と書いてあったので、ハンディは0・6秒となる。続いて「TUF(テレビユー福島)」のゼッケンをつけた男子アナが箱に手を入れ、ピンポン玉を取りだした。7と書いてあったので、ハンディは0・7秒となる。
このハンディは重いのか軽いのか…。男子アナは共に180㌢前後の長身で、肩幅が広い。いかにも「スポーツをやっていました」という感じだ。女子アナ3人は身長が150㌢台と見られる。両者の体格を見比べると、ハンディが0・6~0・7秒では足りないように思えた。

最初にスタート地点に立ったのは、FCTのアナだった。次のランナーが背後に立ち、前のランナーを紹介するという。なるほど! そのために、アナウンサー同士が取材し合っていたのだ。取材→原稿執筆→紹介(30秒間)をスムーズにこなさなければならないので、まさにアナウンサーとしての力量が問われる(紹介のよし悪しはレースに無関係)。
FCTアナの名前は石井佑弥。石井を紹介したのは、NHK福島の岩間瞳だった。
「石井アナウンサーは学生時代、野球をしていました。スライダーが得意な投手でした。現在は漫画喫茶に行くことが趣味だそうです。好きな漫画は『北斗の拳』。屈強な男になるというのが目標です」
石井は勢いよくスタートし、ダーッと走ってゴールに飛び込んだ。勢いがよすぎて、ゴール後に転倒した。その姿を見た川本は「やってくれましたね。狙っていましたね」と言った。石井のタイムは4秒26だった。ハンディの0・6秒をプラスすると4秒86。

次のランナーは岩間。岩間を紹介したのは、TUFの杉浦祐治だった。
「岩間アナウンサーは入局2年目。月曜から金曜の午前11時台に放送されている『ひるはぴ』に出演しています。折り畳み式の自転車に乗って、インテリア用品を買いに行くのが趣味です。地元の福島大学を卒業しました」
岩間のタイムは5秒75だった。
次のランナーは杉浦。杉浦を紹介したのは、KFB(福島放送)の新田朝子だった。
「杉浦アナウンサーは、見ての通り、筋肉隆々の体をしています。それもそのはず、学生時代はアメリカンフットボールをしていました。今年10月に入社し、1人暮らしを始めました。家具集めに凝っており、福島では冷蔵庫とセミダブルのベッドを購入しました。『福島で友達をつくりたい』と語っています」
杉浦のタイムは4秒61だった。ハンディの0・7秒をプラスすると5秒31。
次のランナーは新田。新田を紹介したのは、FTV(福島テレビ)の松永安奈だった。
「新田アナウンサーは今年4月、北海道からやって来ました。『スーパーJチャンネル』『ドミソラ』に出演しています。趣味はダンスで、バレーを10年、チアを4年やっていました。人生の半分はダンス。(フラガールの)福島に来て、フラダンスを始めました」
新田のタイムは5秒88だった。

最後のランナーは松永。松永を紹介したのは、最初に走った石井だった。
「松永アナウンサーは入社1年目。身長152㌢。25歳。神奈川出身で、沖縄を経て、福島に来ました。今日は黄色いタスキをつけて、(8日開催の)東日本女子駅伝をPRします。優勝して、30秒のPRタイムを勝ち取りたいそうです」
松永のタイムは6秒07だった。
結果は①石井②杉浦③岩間④新田⑤松永となった。ハンディをプラスしてもしなくても、この順位は同じ。そのぐらい男女間に走力差があった。
男子アナが優勝すると、会場はしらけた雰囲気になる。女子アナが優勝して、黄色い声でキャッキャキャッキャとはしゃいだ方が盛り上がる。来年は、男子アナにもっと重いハンディを課すべきだ。ピンポン玉を2回取りだして、その数字の合計をハンディにすればよい。5と7なら、ハンディは1・2秒。不満がある放送局は、女子アナを出場させればよい。