
クルマの運転は性格が出ると言われる。急発進、急ハンドル、急ブレーキを多用する人は性格が荒っぽい。前方のクルマに向かって「遅いな」「早く行けよ」などとブツブツと言う人は、怒りっぽい。少しでも前に進もうとして、何度も車線変更する人はせっかち。周りのクルマが奇妙な動きをしても対応できる人は、危機管理能力が高い。
若いカップルがドライブをすると、多くの場合、男性が運転席、女性が助手席に座る。女性は男性の運転をよく見ていた方がよい。周りのクルマに文句を言いながら運転する男性は、気が短い。すぐにカッとするタイプ。このまま交際を続けても上手く行かないし、ましてや結婚などもってのほかだ。深い関係になる前に、早めに別れた方がよい。
男性もそのことを頭に入れておいた方がよい。助手席に女性がいるときは、特に慎重に運転しなければならない。でないと、ある日、突然、別れ話を切り出されることになる。
除染の現場で、19歳の男性と知り合いになった。彼は除染作業員として働きながら、自動車教習所に通っている。同い年の彼女は、すでに免許を取得し、マイカー(軽自動車)も所有している。このため、ドライブをするときは、彼女が運転席、彼が助手席に座ることになる。
「それって、格好悪いだろ」と聞くと、彼はこう言った。
「メチャクチャ格好悪いですよ(笑)。ですから、早く免許を取得して、クルマを買いたいと思っています。除染作業員になったのは、その資金を貯めるためです。助手席に座っていると暇なので、運転している彼女にあれこれ注文をつけたり、周りのクルマに『この下手くそ!』などと言っています。えっ、それって、まずいですか?短気に見えるので、彼女に嫌われますか?今までまったく意識しませんでした。今後は気をつけます」
彼は果たして、免許をとれるだろうか。口うるさい教官とケンカをしないだろうか。ちなみに、見た目は完璧なヤンキーである。
埼玉西武投手コーチの石井丈裕は現役時代、伊東勤(千葉ロッテ監督)とバッテリーを組んでいた。石井はクルマを運転しているとき、助手席にいた伊東にこんな指摘をされたことがある。
「タケは運転中、すぐにイライラする。『前に進まないな』とか『遅いな』と言ったりする。それはマウンドにいるときも同じ。ランナーが出ると、すぐにカッカする。落ち着きがなくなり、キャッチーのサインが見えなくなる。心の余裕がなくなるんだ。そのあたりを変えないと、いいピッチャーにはなれないぞ」
石井は、その指摘を受け入れざるを得なかった。自分でも心当たりがあったからだ。そこで、クルマを運転しているときは泰然と構え、不満を口にしないように心がけた。
正道会館宗師兼K-1プロデューサーの石井和義が空手を始めたのは、愛媛・宇和島東高校時代だった。極真空手芦原道場に入門。師匠は「ケンカ十段」と呼ばれた芦原英幸である。高校卒業後は空手の修行に励む傍ら、芦原の運転手として働いた。そのとき、芦原にこう言われたという。
「石井は、運転がちょっと荒いな…」
師匠の言葉は天の声だ。スムーズな運転をするためにはどうすればいいか…。石井は、コップに水をなみなみと入れて、それをクルマのダッシュボードを置いた。その状態で荒っぽい運転をすれば、水がこぼれる。こぼれないようにするためには、スムーズな運転をするしかない。石井はそうやって、芦原がストレスを感じない運転技術を身につけた。
クルマの運転でトラブルの原因になりやすいのが、クラクションだ。あの音は周りを驚かせ、不快感を与える。なるべく控えるべきだが、現実の社会を見ると、ちょっとしたことで鳴らす輩がいる。鳴らされた側が怒り狂い、クルマを止めて、ケンカを挑むこともある。
無理な追い越しも、トラブルの原因になりやすい。追い越された側が追い越した側を追いかけ回し、事故が起きたりする。それを映画の題材にしたのが、スティーヴン・スピルバーグだ。作品のタイトルは「激突!」。主人公のクルマに襲いかかる巨大なタンクローリーは、まるで怪獣のようだ。
福島県は、地理的に会津、中通り、浜通りの3地方に分けられる。会津と中通りの間にあるのが奥羽山脈、中通りと浜通りの間にあるのが阿武隈山地だ。阿武隈山地の標高は400~600㍍。ここには原発事故で避難区域になった飯舘村、川俣町山木屋地区、浪江町津島地区、葛尾村、田村市都路地区、川内村がある。
この区域をクルマで走っていると、日産ウィングロード(写真)とよく遭遇する。車体の側面にはたいがい会社名が入っている。ドライバーは、県内各地を回る営業マンだ。「今日中に取引先を何軒回らなければならない」という目標があるらしく、猛スピードを出していることが多い。その姿は「必死」という表現がピッタリする。
私はバックミラーにウィングロードが映ると、すぐに道を譲るようにしている。阿武隈山地の道路は起伏が激しく、しかも曲がりくねっている。彼らと同じペースで走ったら、すぐにガソリンがなくなる。彼らのガソリン代は会社持ちだが、こっちは自腹。急いでいる彼らの前をトロトロと走るのも悪いので、クルマを道路の左側に寄せ、「はい、抜いてくださいよ」とやるのだ。
抜かれるとムカッとするが、抜かしてやればそうした感情はわかない。抜いた側はほぼ例外なくハザードランプを点滅させ、感謝の気持ちを表す。誰も損をしないので、場が丸く収まる。
ただ、若いときはこれがなかなかできなかった。後ろからクルマが来ると、「抜かれたくない」と思い、ついスピードを出してしまった。レースをしているわけでもないのに…。それでも事故を起こさなかったのは、私に運転技術があったからではない。ただ単に運がよかっただけだ。