毎日新聞の斗ヶ沢秀俊編集委員は原発事故後、ラジオ福島に頻繁に出演し、リスナーに「慌てて県外に避難する状況ではない」と呼びかけた。一方で、ツイッターでの情報発信も開始した。毎日新聞の紙面はスペースに限りがあるし、ほかの記事との兼ね合いもある。そこで、自分の思ったことを自由に書けるネットメディアを活用することにしたのだ。
「ここでは会社とは関係しない、個人のつぶやきを書いています」と念を押しているだけあって、新聞よりも過激な記述が目立つ。

斗ヶ沢氏がラジオ福島に出演したとき、私は番組にこんなメッセージを送ったことがある。
「原発は安全だと言われていたのに、今回、福島で事故が起きた。これで原発の専門家は信用できないという空気が生まれた。同時に『放射線被曝医療の専門家も信用できない』となった。原発と被曝医療はまったく別の分野なのに、両方が混同されてしまった」
大和田新アナがこのメッセージを読むと、すぐさま斗ヶ沢氏は「同感です」と言った。
まったく別の分野が混同されたのは、武田邦彦中部大学教授や小出裕章京都大学原子炉実験所助教が両方の問題についてコメントしたからではないか。

小島正美『誤解だらけの放射能ニュース』(エネルギーフォーラム新書)という本がある。この中に専門家6人の座談会が載っている。出席者は次の通り。
▽山下俊一・福島県立医科大学副学長
▽木下冨雄・京都大学名誉教授
▽島田義也・放射線医学総合研究所発達期被ばく影響研究グループリーダー
▽柴田義貞・長崎大学大学院特任教授
▽斗ヶ沢秀俊・毎日新聞編集委員
▽小島正美・毎日新聞編集委員兼東京理科大学非常勤講師
ネット上では主に「御用学者」「御用ジャーナリスト」と呼ばれている人たちだ。
この中で、小島氏はこんな問題提起をした。
「震災から半年間の放射能報道を見ていると、いくつかのターニングポイントがあるように思います。まず筆頭に挙げられるのが、(注:昨年)4月下旬、会見で涙ながらに訴えた小佐古敏荘内閣参与(東京大学教授)でしょう。内部告発的な感じで、女性や子供を守ろうと訴えれば、それはマスコミの格好の好材料になります。それまでは比較的冷静だったマスコミが、この小佐古教授の登場で一気に不安を強調するような論調になっていったという印象をもっていますが、どうでしょうか」
斗ヶ沢氏はこう回答した。
「私も同じように思います。報道の流れの転機になったのが、小佐古敏荘内閣参与の辞任だと思います。あれで福島の雰囲気ががらっと変わってしまいましたからね」
ラジオ福島に出演したときの斗ヶ沢氏は、常に穏やかな口調だ。しかし、この本では「小佐古氏はそれ以前、涙の会見とは全く違うことをおっしゃっていた」「小佐古氏は、本当はどう考えているのかをはっきりさせる必要があるのです」と強い調子で批判している。