2026年7月14日に私が確認した時点で、再生3943回。公開から15日。
動画では、GeminiとNotebookLMを組み合わせて「AIに投げるプロンプトをAIに選ばせる」という使い方が語られていました([元動画](https://youtu.be/bt-Y9XrfZwk)/YouTubeチャンネル「【さき】のAIでええやん。」)。
これを見て、私は静かにイスから3センチ浮きました。
AIへの頼み方、つまりプロンプトを覚える話ではありません。「今、この状況でどの頼み方をすればいいか」まで、AIに相談する話です。
こんばんは。せおっちです。
質問ガチャ奉行、そろそろ退任です
AIを使う時、だいたい最初に出てくるのがプロンプトです。
「あなたはプロの編集者です」「表形式で整理して」「小学生にもわかるように」「反論を想定して」
このへんの呪文、見覚えがある人も多いと思います。
もちろん便利です。私も使います。なんなら、5分の作業をサボるために5時間かけて自動化ツールを作るタイプの人間です。冷蔵庫の余り物で炒め物を作る前に、冷蔵庫管理アプリを作り始める病気です。
でも、現場で詰まるのは「良いプロンプトを知らない」だけではありません。もっと手前で止まります。
「で、今はどれを使えばいいの?」
要約したいのか。論点を出したいのか。リスクを洗いたいのか。社内共有用にしたいのか。営業トークに変えたいのか。
選択肢が増えるほど、頭の中に小さな「質問ガチャ奉行」が座ります。そして昼過ぎに、だいたいこう言います。
「もう普通に聞けばよくない?」
負けです。AI時代の小さな関ヶ原です。
NotebookLMは資料係、Geminiは番頭

NotebookLMとGeminiを組み合わせる考え方はシンプルです。資料をNotebookLM側に持たせ、Gemini側で状況に応じたプロンプト選択をさせる、という流れです。
NotebookLMは、入れた資料を参照する係です。社内資料、商品説明、議事録、FAQ、過去記事、営業資料などを入れておく。
Geminiは、番頭です。「この資料をもとに、今の目的ならどの問い方が合うか」を選ぶ係。
組み合わせ方はこんな感じです。
NotebookLMに、参照させたい資料を入れる
Geminiに、目的と読者と成果物の形を渡す
プロンプト棚を、Googleドキュメントやスプレッドシートに置く
棚の中身をそのままコピーしてGeminiのチャットに貼り、「この中から今の目的に合うものを選んで」と頼む
最後の採用判断は人間が持つ
このコピペひと手間が地味に効きます。棚を眺めて選ぶ作業が人間からGeminiに移るだけで、「今日はどれだっけ」の迷子が消えます。
この「最後の採用判断は人間」が、請求書の小数点くらい効きます。
プロンプト棚、最初の失敗は「南北朝時代」
自社のAIエージェント事業でも、似たような棚をずっと運用しています。約260社にAIシステムを納品してきて、Chrome拡張は約700ユーザーが使っている。当然、問い合わせ対応もサポート文面も、毎回ゼロから書いているわけがありません。
最初にやらかしたのは、棚を2つ作ってしまったことです。
営業用の「プロンプト棚」と、開発サポート用の「プロンプト棚」を別々のスプレッドシートで育てていたら、半年後に中身が完全に分裂していました。同じ「初心者向けに説明する」という項目なのに、片方は敬語がやたら硬く、もう片方は絵文字だらけ。私が2つの棚を行き来しているうちに、どっちがどっちか分からなくなって、営業の問い合わせに開発トーンの返信を出しかけたこともあります。
うちの棚に起きていたのは、要するに小さな南北朝時代でした。同じ「プロンプト棚」という御所を名乗る2つの勢力が、いつの間にか別の言葉を話し始めていたわけです。今は棚をひとつに統一しましたが、営業チームの誰かが今でも「あの絵文字だらけの棚、どこ行った」と聞いてくることがあります。
まず10個だけ、プロンプト棚を作る

こういう話をすると、すぐ巨大な仕組みを作りたくなります。プロンプト100個。カテゴリ20個。自動分類。タグ管理。運用ルール。棚卸し会議。
やめましょう。その時点で、AI活用ではなく町内会の備品管理です。
最初は10個で十分です。増やすのも週1個まで。たとえば、こんな棚です。
| 目的 | 使う場面 ||---|---|| 要約する | 長い資料を会議前に短く読みたい時 || 論点を出す | 何が問題か、まだ言語化できていない時 || 反論を想定する | 提案前に突っ込まれそうな点を洗いたい時 || 初心者向けに説明する | 専門用語が多すぎて相手が置いてけぼりになりそうな時 || 具体例を増やす | 抽象論が続いて、読者の足が地面から離れた時 || リスクを洗う | 実行前に事故りそうな場所を見たい時 || 比較表にする | A案B案で迷っている時 || SNS投稿に変える | 長文の一部を短く切り出したい時 || 記事構成にする | ネタはあるのに順番が決まらない時 || 次のアクションに落とす | 読んだ後、何をすればいいか決めたい時 |
そして、Geminiにこう頼みます。
以下の「プロンプト棚」から、今の目的に一番合うものを1つ選んでください。
目的: [ここに目的を書く]
読者: [誰向けかを書く]
入力資料: [資料の概要を書く]
出したい成果物: [記事、会議メモ、営業文など]
選んだプロンプト名、選んだ理由、実行時に足すべき条件を1行ずつ出してください。迷う場合は第2候補も出してください。
これだけで、毎回「どの聞き方が当たりか」をくじ引きする時間が減ります。毎回くじを引く回数が、週5から週2くらいになります。
任せていいのは、段取りまで
ここで怖いのは、AIに判断を丸投げすることです。任せる場所を間違えると危ない。任せていいのは、段取りまでです。
どの資料を見るか。どの問い方から始めるか。要約の次に、反論想定へ進むか。比較表にするか。このあたりはAIに選ばせてもいい。
でも、最後に採用するかどうかは人間です。うちではこの最終確認の役目を「検収印奉行」と呼んでいます。
「このサポート文面をお客さんに出していいか」「この言い方で気分を害す人はいないか」「この数字を根拠として使っていいか」「自分の名前で出せるか」
ここは検収印奉行の仕事で、AIに渡してはいけません。実際、うちのChrome拡張の問い合わせ対応でも、Geminiが選んだ「初心者向けに説明する」プロンプトの返信案をそのまま送ったら、専門用語を削りすぎて逆に何も伝わらない返信になったことがあります。選ばせるのはAI、決めるのは人間。この境界線を、私は失敗して初めて体に刻みました。
私も散歩しながらChatGPTに話す時、最初からきれいな質問を投げているわけではありません。多摩川の土手を歩きながら、
「なんか最近、AI使ってるのに疲れる人が増えてる気がするんだよな」
くらいの、湯気みたいな独り言から始まります。そこから論点を分け、記事にして、台本にして、動画にする。この流れで人間が持つべきなのは、完璧なプロンプトではありません。違和感です。
「ここ、話がうますぎるな」「この切り口、読者に刺さりそうだな」「この説明、妻に見せたら家計監査で差し戻されそうだな」
この生活に根ざした判断だけは、最後まで検収印奉行の手元に置く。
月額課金より、迷いの年貢が高い

AIツールに月額課金しているのに、毎回「良い聞き方とは何か」で止まる。これはけっこう痛いです。
お金も払っている。時間も払っている。さらに判断力まで払っている。サブスクに年貢を納めて、おまけに小判まで積んでいるようなものです。
私の現場感では、AIが苦手な人は「文章が書けない」よりも、「何を頼めばいいかわからない」で止まることが多いです。約260社の自社システム、約700ユーザーのChrome拡張を見てきて、よく見るのは、AIの性能不足というより入口の迷子です。
資料はある。目的もぼんやりある。でも、最初の一手が出ない。そこにAI番頭が来て、
「この資料なら、まず要約ではなく、顧客別の訴求に分けましょう」
と言ってくれる。これは派手ではありません。でも、仕事ではこういう地味な段取りが効きます。誰も褒めないけど、ないと詰むやつです。
質問ガチャ奉行を、棚番に降格する
プロンプト自動選択は、AIに全部考えさせる話ではありません。人間が毎回くじ引きしていた「問い方選び」を、棚から選ぶ作業に変える話です。
うまく聞ける人だけが得をしていた道具が、棚に頼れば誰でも使える道具になる。そんな移動が、静かに始まっている感じがしました。
元動画で語られていたのは、「GeminiとNotebookLMを組み合わせ、状況に応じたプロンプト選択をAIに任せる使い方が紹介されていた」というところまでです。そこから先、どの業務に効くか、どこまで任せるかは、自分の現場で試す必要があります。うちの棚も、まだ南北朝時代の傷が完全に治ったわけではありません。
仕様や料金は変わります。試す前に、最新情報だけ確認してください。
私は今日も、5分の迷いを減らすために、たぶん5時間かけてプロンプト棚を整備します。そして明日、またイスから3センチ浮く予定です。