先日、ある番組で、スクリーントーンなるものの特集をやっていた。
浦沢直樹と水瀬藍という漫画家がゲストとして出演し、スクリーントーンを使った作画の実演をやっていた。
スクリーントーンは、イギリスで製図や建築図面で使われていたもので、日本では白黒漫画のイメージバックや効果トーンとして発達していった。
手描きの線画にスクリーントーン(シール状になっている)を必要な分だけ貼り、カッターで原画の線に合わせてカットしていく。不要な分を剥がせば、陰影やイメージが表現されるというものだ。
アナログ作画の象徴的なものである。
この微妙な味わいが捨てがたいと、二人の漫画家はデジタル制作が当たり前の現代においても尚、スクリーントーンを愛用している。番組内でも夢中になって作業していた。見ているこちらも強く引き込まれた。
広告制作においては、かつて版下なるものがあった。
制作者は線でデザインを施し、ポジ写真のアタリをとり、写植した印画紙を版に貼って原稿として印刷会社に入稿していた。クリエイティブワークと版下制作は本来は別物だが、ほとんどの制作会社は両方を一人でやっていた。線も定規を当てて手で引いていた。終止点に微妙な止め跡が残って、手作り感が伝わってきた。
テレビを見ていて、漫画よりその作業が楽しそうだったので、用事ついでに大型店舗のデザインコーナーに行ってみると、なるほど売っている。
せっかくなので、番組で使っていた「I-C SCREEN」のS-192という品番を買った。漫画の事はさっぱりわからないが、「パイナップルARMY」という漫画のジェド豪士という人物が来ていた服のものらしい。もう一つは柄系のS-929。
何に貼ろうかと思い、家にある某コミックの一部分を拡大コピーした。国民的大人気コミックの一コマであり、人物は、未来から来た動物型ロボットと暮らす小学生だ。
服は白なのだが、ここにS-192を切り貼りしていく。輪郭に合わせてカッターで切る。これも漫画家の言う「ラフな感じが絵の味わいとして出る」ところなのだろう。
背景にS-929を貼っていく。
すべてを終えると、もとのシーンとは全く異なる雰囲気のシーンに変わった。服も「洋服のトーンでキャラクターのムードが変わる」という漫画家の言葉通り。
輪郭に合わせて貼るところからプロローグが始まり、クライマックスは剥がす瞬間である。除幕式のよう。楽しい時間だった。
アナログと言っても、すべてが手描きではないのを初めて知った。小さなコマならスクリーントーンを使わなくても、ペンで細かく動かしたほうが早いのではとも思うが。
それでも「味わい」という点では、デジタルにはないものがある。
ミスのない完璧な作画は綺麗だ。だが手作りの絵は、作品を通して作者とのコミュニケーションがとれる。
ギターやバイオリンの弦の擦れる音や、ピアノの鍵盤をたたく音と同じだ。
それは人間の痕跡とも言える。









