小説『君の名は。』
新海誠/角川文庫
2016年9月15日第14版
田舎町に暮らす女子高生と、東京で暮らす男子高生。赤の他人の二人が、なぜか1週間に2、3回、精神が入れ替わってしまう。次第にお互いの存在を確認し合い、一定のルールを設けて入れ替わりを受け入れていたが、ある日を境に入れ替わりは起こらなくなり、女子高生からのメッセージも途絶える。気になった男子高生は、記憶だけを頼りに女子高生の暮らす町を探しあてたが、そこは3年前に超彗星の衝突により壊滅していた村だった…。
顔は知っているが会えない存在。失って初めて自分の気持ちに気づく。いつしか記憶はなくなり、ごく普通の日常を送る男子高生。それでも心に刻まれた炎は消えない…。
ハッピーなラストは心をなごませてくれる。
誰でも、追いたくても追えなかったもの、あきらめたものがある。
時が過ぎ、現実と向き合い、それが遠い記憶に追いやられたとしても、気持ちが消えることはない。
自分を客観的に見られて、初めて人は成長する。
そんな気持ちをたくさん経験できるのは、幸せなことである。
映画では風景や街並みの美しさも話題になっていたが、本では文字だけ。当然、映像はない。その分、発想力、独創性が試されて、この面でも楽しめる。
この小説は、映画の完成以前に発表されている。いわば原作である。
映像を扱う映画監督が、どんな文章を書くのか興味があった。
著者は長野県の小海町の出身だ。
昔、訪れた事があるが、綺麗な山並みと、心地よい高原の風は、今でも思い出に残っている。本作の田舎町も、生まれ故郷の小海町をイメージしたものかもしれない。
表紙もいろいろなことを暗示していて、深みを感じさせるものである。
2016年6月25日第1版
