『マスカレード・ホテル』
東野圭吾/集英社
2011年9月10日第1刷
本書の発行当時、著者は日本推理作家協会の理事長をしていた。文壇の会合でホテルの宴会場に出向くことが多かったという(ただし、初出の連載時は理事長職ではなかった)。出版社との打ち合わせにはラウンジを、取材を受ける際には客室を利用したりと、ホテルとの接点は従来以上に増えていたようだ。
ホテルの従業員と刑事。異質な二人の組み合わせが、凶悪犯罪と対峙する。
同じミステリー作家の森村誠一は、元ホテルマンという経歴を生かし、ホテルの慣習や構造上の盲点を突いたトリックを披露していた。それを警察がどう暴くかという、純粋な推理小説が多かったが、本書は捜査に特殊な設定を施し、ホテルに織り成す人間模様にドラマ性を与えている。
捜査はマスカレード(=仮面舞踏会)の幕開けでもあった。
初出2008年~2010年『小説すばる』
