『アラジンと魔法のランプ』
アラビアンナイト:川真田純子訳/講談社文庫
1993年6月15日第1刷
ランプをこすると現れる魔神の力で、一旦は幸福をつかんだアラジンだが、ランプを盗まれて絶体絶命に。だが勇気と幸運でもとの生活を取り戻し、最後は王となる『アラジンと魔法のランプ』。欲のない質素な暮らしのアリ・ババが、偶然盗賊の宝の隠し場所を見つけ、幾度となく繰り返された闘いの末に、妻の知恵の助けもあって幸福をつかむ『アリ・ババの物語(アリババと40人の盗賊)』。
表題作を含む6編の物語がおさめられている。
『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』は、9~10世紀に原型が出来たとされるが、近年の研究で、現在の形になった頃にはそれ以降に聞き伝えられたものも含んでいることが判明している。
この『アラジンと魔法のランプ』と『アリ・ババの物語』、さらには『シンドバッドの冒険』なども、アラビア語の原典や写本には存在していない。
元々は、『千夜一夜物語』は、暴君でもある王の行動を鎮めようと、一人の美しい乙女が自ら花嫁となり、千と一の夜の数だけ夜毎に説話を聞かせるうちに、王が改心していくというもの。
その説話が、その後独立して紹介されるようになった。
元々は「千」という数字に具体性はなかったが、後年の編者が原典の話の数が千に満たないので、さまざまな話をつけ足して千に到達させたとされる。
語って聞かせながら、王の心を改めさせていったことを考えると、一つ一つの話に深い意味を感じるようになる。
キャラバンによる移動と交易で、アラビアのみならず、北アフリカ、インド、中国など、さまざまな文化が入り交じり、多彩な理想像や価値観が盛り込まれているようだ。
10世紀というと、日本では『竹取物語』を始め、『伊勢物語』『落窪物語』『大和物語』などが発表された頃。
やはり愛憎や超自然的な力にまつわる話、説話的な内容が多い。
日本の文学史上、重要な時代だった。
初出9~10世紀
