『メキシコ'86ワールドカップ 決戦速報号』
日本スポーツ企画出版社
1986年8月15日発行
1986年ワールドカップでのアルゼンチンの下馬評は決して高くなかった。
年明けのテストマッチで連敗していたし、カルロス・ビラルド監督の采配にも疑問の目が向けられていた。
マラドーナの足の負傷も、どの程度回復しているか不明だった。
だが本大会に入ると、アルゼンチンは輝きを放つ。
どのチームもマラドーナを止めることは出来なかった。
チームメイトはマラドーナを生かし、マラドーナは他のメンバーの長所を引き出した。
アルゼンチンは完全にマラドーナのチームだった。開幕から決勝までチーム一丸となってマラドーナを中心に戦い抜いた。
プレーはほぼ左足のみ。
フェイントも使わず、間合いと切り返しだけで相手をかわしていく。
咄嗟にはどこをどう突破したのか分からない。そのくらいディフェンダーの間を巧みに抜けていく。
マラドーナのドリブルの写真を見ると、舌を出している写真がよく見られる。
いかに繊細なボールタッチをしていたかが分かる。
足に吸い付くようなドリブルは、その恐るべき集中力から生まれていた。
貧困に対する手厚い支援も行っていた。
バルセロナでプレーした後、イタリアの北部ではなく、経済後進地帯の南部ナポリに行ったのも、彼の反骨精神からだったのかもしれない。
今日の新聞では、スポーツ面はもちろん、一面、社会面、そして何と国際面でも取り上げられていた。
偉大なアスリートの記憶は、永遠に色あせない。


