「遠くの声に耳を澄ませて」 (宮下奈都/新潮文庫)

どれもささいな出来事や心情ばかりだが、それでいて余韻を残すお話ばかり
一人息子が、遠い昔の恋人と同じことを言い出し、動揺しながらも前に向かう母を描いた「どこにでも猫がいる」。出張先でふと耳にした方言が、かつての転校生を思い出させる「秋の転校生」。屋上で夕焼けを見ながら、女医と看護師が、一人の患者との関わりに触れる「夕焼けの犬」は特に心に残った。
表題の「遠くの声に耳を澄ませて」は12の短編の総称タイトルだ。この題名のお話は12の中にはない。
面白いのは、12編の中に相関関係にある短編同士があること
どれもさわやかな余韻を残すのは、各作品、希望や未来へ向かっていく姿勢で終わっているから。
著者の宮下奈都は、2016年本屋大賞「羊と鋼の森」の著者でもある。