出産後に取り出された胎盤をサプリメントなどに加工して摂取する「胎盤食」は、
健康被害をもたらす可能性があるとして、注意喚起がなされている。
オーストラリア保健省の薬品・医薬品行政局(TGA)は1月、「胎盤の摂取は、潜在的なリスクがある」と声明を発表。
米国疾病予防管理センター(CDC)も昨年、胎盤をカプセルで摂取していた母親の子どもが、深刻な感染症を引き起こしたとして、注意を呼び掛けている。
胎盤食の推進派は、胎盤を食べると産後の痛みや気持ちの落ち込みを和らげたり、
母乳の量を増やしたりする効果があると主張する。
胎盤をカプセルやスムージーに加工する業者もおり、米国では、キム・カーダシアン・ウェストなど有名人が胎盤食を実践したと公表して注目を集めた。
しかし、産婦人科系専門誌「American Journal of Obstetrics& Gynecology」に昨年掲載された論文では、「ヒトが胎盤を摂取する臨床的利点の科学的根拠は全くない」と健康効果を否定。
さらに「潜在的危険があり、医師は女性たちが実践しないよう指導すべきだ」と結論付けている。
CDCによると、2016年、新生児がB群連鎖球菌(GBS)感染症を発症し、病院に運ばれた。
11日間の治療を受けて完治したが、退院5日後、感染症が再発。
母親の母乳などからGBSは検出されなかったが、母親が摂取していたカプセルからGBSが検出された。
母親は、自身の胎盤を加工したカプセルを産後3日目から1日3回2粒摂取していたという。
これにより、「母親の腸や皮膚へGBSが定着しやすくなった」ことが新生児の感染要因と考えられるという。
CDCは「汚染された胎盤を使ったカプセルの摂取は、母親の感染症リスクを高めるとともに、子供のリスクも高める」とし、「胎盤の摂取は避けるべき」と主張している。
胎盤は通常、医療廃棄物として廃棄される。
TGAは「胎盤の適切な保存方法や、安全な食用として加工するための基準は定められておらず、ウイルスなど感染因子を含む可能性が高い」としている。
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