FOD > フィギュア激闘録2020-21 > #1 羽生結弦 全日本選手権 直前インタビュー

Rec ’20.12.23

ANAの白ジャス

Y. はい、お願いします。

 

Q. 10ヶ月ぶりの試合 GPシリーズ欠場する中で全日本出場の理由

Y.  率直に言えば、出たい、っていう気持ちよりも、リスク、の方が自分の中では大きいと思っています

なので、自分の出たいという気持ちとか、自分が試合に出場して演技したいとか、皆さんの前でどうしたい、っていうのよりも、まずは、

自分が、感染拡大のきっかけにまずはならないように、そして自分自身も罹らないようにして、今、色んな地域で医療が大変なことになっていたりとか、もちろん財政が大変な事も、ニュースとかでよく目にしているので分かるんですけど、ただ、それを、自分が、今、最前線で頑張っていらっしゃる医療の方々に、負担にかからないようにすることが、多分一番大切だと自分の中では思っているので、

出なくてはいけないっていう気持ちは、拭えないですけど、

まあ、そのような形の気持ちで、今回は来ています。

とにかく、来シーズンに向けて、あのー、強化選手のこともありますし、何よりも世界選手権、まあ四大陸は中止になってしまいましたけれど、世界選手権の選考会っていう位置づけが一番大きく。

何回か怪我をしていて、やむを得ず出れなかったときもありましたけれども、

実際、自分の健康状態としては、絶対に出れる状態でもありますし、

全日本選手権が必須ということも分かってはいるので。

もちろん、世界選手権がこれからどうなるかも分かりませんし、

世界中のこの新型コロナウィルスというものと人類っていうものとの戦いが、はっきり言って、どうなっていくかは誰も予想がつかないことだと思うんですけど、

ただ、僕自身の、未来に向かって、ちょっとでも、希望をつないでおきたいな、というような形です。

 

Q.  シーズン最初の試合が全日本、は初めてになるが。

Y.  あまり全日本だからとかっていう緊張感だったり、久しぶりの試合だからということよりも、今どちらかというとやっぱり、あのー、こういう決断をしたのだから、あのー、

まあ僕は競技を楽しむということは、基本的に考えてはこなかったですけど、

こういう決断をしたからこそ、責任を持って、しっかりといい演技をするべきだなと思ってます。

 

Q.  コロナ期間に入りどのように過ごしていたか

Y.  もちろん練習していて、うまく行く時もありましたけど、うまく行かない時もありましたし、コーチがまったくいない状況で、10? 何ヶ月ですかね、かなり長い期間、コーチがいない中で、練習してきて、

最初はやはり難しかったんですけれども、そういう中で得たもの、学んだものもたくさんありましたし。その、学んで来たものだったり、経験してきたこと、

この、2月の四大陸選手権が終わって、これまで色んな事をまた経験して来れたと思うので、それは、僕自身でしか経験し得なかったことだと思うので、それをうまく活用しながら、試合の演技に向けて、しっかり使えたらいいなっていう気持ちでいます。とりあえずは。

 

Q.  披露しようとしているプログラムはどんな感じになっていますか

Y.  曲名は多分、見る前に発表されるんだと思うんですけど、まあ、見て頂いての楽しみにしたいかなというふうには思っていて、

ここまで来るにあたって、1人で練習している期間、

自分のスケートの長所ってなんだろう、とか、

自分が磨いていかなきゃいけないもの、

逆に、苦手とするものを消していく作業みたいなものを

自分自身とひたすら向き合って、やって来たんですけど、

そういった、その、コーチからのアドバイスだけではなくて、自分自身が見つめた結果としてのスケートはまた違ったものになっているとは思うので、それを見て頂けたら、と思います。

 

振り付けに関しては、ショートはジェフ、フリーはシェイに頼んでいて、例年通りのコンビではあるんですけど、

フリーの方が先に出来ていて、

フリーは、えっとー、そうですね、僕らしいというか、すごく自分自身も、気持ちを乗せて、

自分が選んだ曲でもありますし、気持ちを乗せて、雰囲気だったり、世界感であったり、そういったものを感じて頂けるようになっているプログラムじゃないかなと。

ショートに関しては、あのー

両方ともビデオを送って頂いたり、自分自身も送ったり、飛ばしながら作ったんですけど、

ショートは、(笑)、ステップは、すごい、パッて、送られて来て、これがいいって言われて、

で、それをやって、

その後、なかなか、構成が出来なくって、

まあやっぱりそこは、リモートの難しさだと思うんですけど、

結構、ジャンプの配置とか、スピンの配置とか、そういう流れ以外は全部、

ほぼ全部自分が決めていると言っても過言ではないプログラムなので、

はっきり言って見せるのは、皆さんの前で演技するのは、ちょっと緊張する部分もありますけど、でもなんか、ある意味、初めて、アイスショー以外で、

アイスショーの、それこそオープニングとかちっちゃい場面でしたけど、それ以外で初めて、ちゃんと自分が振り付けを考えて、色んな工夫をしながら、作り上げたプログラムだな、と思っています

 

振りを頂いて、自分はこの音にはめたいとか、この音を表現したいとか、そういったものはよくありましたし、

ジャンプをちゃんと入れてみて、ここはこうしなきゃいけないとか、ああしなきゃいけないとか、いう制約が色々あった上で今までプログラムは作って来ていただいていましたけど、

今回は本当に、振り自体も、結構考えなくはいけないところだったりとか、

ステップとかも色々自分で工夫して、自分らしい、先ほど言った自分らしい自分の長所だったりとか、

見て頂きたいようなところをちりばめたつもりではいるので、

それは今までのプログラムとはまた違った魅力になるのかなとは思います。

 

Q.  ジャンプ構成に関してはどんなイメージ

Y.  とりあえずショートは、サルコウ、トウループ、アクセルの、

バラード第1番、去年の、去年じゃない、今年の二月に滑ったバラード第1番のような構成で行こうかなというふうに思ってて。

フリーに関しては、ループ、サルコウ、で、後半にトウループのコンビネーション2つ。

で、アクセル2つっていう構成にしています。

ルッツじゃなくて、ループで。はい。

 

まず、そもそも、ループの基礎点が上がったっていうあれがあって、すごいループ練習したんですよ、無くなっちゃいましたけど。(笑)

でも、やっぱり、自分にとって、ルッツよりも、長く付き合っているジャンプですし、

あと、何ですかね、その、

ループジャンパーみたいな、プライドはあるんですよ、ちょっと。

みんな、ループを排除してやってったりとか、

やっぱり、ループジャンプに関して、難しい点は結構あるので、

だからみんな、安定性を求めて、やっぱりルッツとかフリップとかになってたりするんですけど、

やっぱり自分自身、初めて4回転ループを公式の場で、ちゃんと決めれたっていう、プライドみたいなものがあって、やっぱりループにしたいなって思いました。

 

Q.  4回転アクセルの進捗状況は

Y.  アクセルは、徐々にでも感覚は掴めて来ているかなと。まだ跳べてはないですけど。

やっぱりコーチ不在だったということもあって、結構苦労してたんで。

でも、何となく、見えてきたなとは思ってます。

あの、何ですかね、

ちょっと余裕出て来ました。4回転アクセルっていうことについて考えるときに。

あと、イメージの中で、跳べるイメージとかも、具体的に膨らんで来てて、

あとはそれに身体を乗せられるか、乗せられないかぐらいだと思うので。

まあ今回はやらないですけど。

ちょっとずつ、その、4回転半っていう壁を、乗りこえて行けたらな、て思います。

 

まあ、率直に言えばなんですけど、アクセル跳びたかったなっていう気持ちはもちろんあって。

で、もっと練習して来たかったなっていう気持ちももちろんあったんですね。

ただ、それだけじゃないっていうのを、やっぱ1人で練習していて改めて気づいて、

なんか、ちょっと大人になったんですかね

そういうなんか、割り切りを出来るようになりました。

試合に勝つため、とかそういう目的でじゃなくて、

本当に自分が演技したいものって何だろう、とか。

より、プログラムについても、オリジンやったからっていうのがあるのかもしれないですけど、

このブログラムに対して、じゃあ、4A入れて安定させられるのか、とか、

いや、それでぐじゃぐじゃになったら、このプログラムに対してどんな気持ちでやるんだっていうのとか

なんか、そういうのを色々割り切れるようになったなって思ってて、

練習方法とかも色々考えてやって来たからこそ、

何て言うんですかね、

やっと自分が居るべき場所みたいな、自分がやるべき演技っていうのは、

今回のフリーとショートで、ある程度出せるんじゃないかな、とは思います。

 

まあ、やっぱSEIMEIとバラード第1番と比べちゃうと、

もちろんまだ、あそこまでの、自分の自信の塊みたいなところまでには行ってないです。

ただ、うーん、何ていうんですかね、

もっと、あの2つのプログラムによって、うーん、何て言えばいいかな、

あそこの全日本終わって、去年の全日本終わって、メダリストでSEIMEIを滑らせて頂いて、その時から、四大陸で、SEIMEIを選んで、バラード第1番を選んで、

あの2人たちと滑ったからこそ自分が見せたいスケートだったり、自分がそもそも求めていたスケートだったり、

自分がそもそもスケートを好きだった理由だったり、

そういったことに近づけてて。

それが、今年のプログラムは、なんか、よりそこを大事にした選曲とかもしてたんで、それは出来たんじゃないかなと思います。

 

まあ、競技なんでね、芸術面ももちろんあるんですけど、でも、競技なんで、

それで点数が出なかったら意味が無いとやっぱり僕は思いますし、

どんだけ表現したいことがあったとしても、それを伝えられる技術が無ければそれはしょうがないですし、

だから、もちろんそういった面では、緊張もするわけですけど、

でも、なんか冷静に自分のこと見つめてて。

 

このインタビューの時とかもそうですけど、

思ったよりも、やっぱ色んなこと経験してきて、場数積んで、

うん、自分、コントロール出来るようになったなって、今思ってるんで。

うん。とにかく、自分が見せたいスケートを、

自分がやり抜きたいスタイルを、

貫いて、今回は演技したいなと思います。

 

Q.  世界がこんな状況だからこそ演技で発信したいメッセージは。

Y.  もちろんあります。

今回の選曲の背景には、そういった気持ちも少なからずあります。

なので、もちろん、自分の演技を観て、別に何でもいいんですよ、別に、何でもいいから、誰かの心に、何か、感情が灯る、何かの気持ちが灯るきっかけになればいいなっていうふうに思います。

 

Q.  全日本王座奪還という気持ちは

Y.  もちろんです。

それは勝ちます。はい。ふうん。(猫ちゃんの顔)

だって、出るって決断したんで、そのぐらいの気持ちじゃないと、やれないと思います。

 

Q.  ありがとうございます。

Y.  ありがとうございました。

 

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太字は私が勝手につけました。

「それは勝ちます」ときっぱり言い切って、猫ちゃんみたいな顔になって笑う人。

底知れない強さを感じます。

 

2021年の全日本選手権公式練習まで、あと4日。

右足は順調に回復しておられるのか。姿を現してくれるだろうか。

2017年はGP第4試合で負傷して、次に姿を現したのが2月の平昌だった。

だから、欠場もあると思っていなくては。

それでも、期待に胸はふるえる。

 

羽生さんが思い描く演技ができますように。