60ページほどの物語。図書館で読み終えた後、ため息をつき、込み上げてくる涙を喉の奥までぐっと飲み込んだ。それほど大規模で、重要な旅をした気分がした。

実は恥ずかしい話、「ガラス玉~」を私は最後まで読んでいない。時系列的には、ゴルトムントの物語が、「東方への旅」を読むまで最新だった。

本作品を読んで思ったのは、これまでにはいなかった全く新たな人物像が登場した、ということ。もちろん、レーオである。一体芸術家が、このレーオのような人物を描くまでにはどれほどの労働量が必要なのだろう。

この本で精神的な段階は、相当進んでる。語り始めから、形而上学的な話だ。少なくとも、ヘッセを読むとき最初に読む本ではないし、普段から読書しないような人が、実利的な目的からこの本を読んでヘッセを嫌いにならないでほしいと切に思う。特に形而上学的な側面故に。でも、言わせてもらうとヘッセは、私たちなどよりよっぽど形而下学的なことを熟知した人であると私は理解している。なので、ある程度文学を知ってる人が読むと凄いのではないだろうか。

そして、不思議と暖かい気持ちになれる。物語るとは何か。奉仕とは何か。また、絶望の意味とは。そういうテーマへの向き合い方が誠実なんだね。

この本はヘッセの作品の中でも特に内省的な気がする。そして、読者にはあまり理解されなかったそうだ。確かヘッセ自身はこの本気に入っていたと思う。

参考図書
「東方への旅」
作 ヘルマン・ヘッセ 訳 三宅博子
「ヘルマン・ヘッセ全集(13)」(2006年、臨川書店)より