ちゃ―坊の恩返し | 気ままにバツイチ・シングルライフ

ちゃ―坊の恩返し

ちゃー坊が死んだ。

ちゃ―坊というのは、私と元夫が飼っていた猫のことだ。
離婚したときに元夫のもとにおいてきた。
17歳半だった。

たまたま元夫も私も仕事が休みだったので、息子たちに学校を休ませて、久しぶりに家族4人揃って焼き場に行くことにした。
動物病院に勤めている姪が紹介してくれた。

ボアでできたキャットハウスに入れたちゃ―坊の死骸を抱いて、距離にすれば30分くらいのところへ、迷いに迷って1時間半くらいかかってたどり着いた。

いつもは家族で行動するのを嫌がり、やれ車に酔ったとかお腹が空いたとかうるさい息子たちも何も言わずに大人しく乗っている。
道に迷うとパニックを起こし機嫌が悪くなる元夫も文句も言わず、運転している。

紹介してもらったのはお寺さんで、話しを聞くと焼き場と提携していて、死体を預けて焼き場に持っていってもらい、お骨は2,3日後に引き取りに来てください、ということだった。

みんなで見送り、連れて帰りたかったのでそこを断り、元夫がどこかで看板を見た、と言って記憶を頼りに番号案内で調べると、3時に予約が取れた。
元夫にしては素晴らしく素早い対応だった。

そんなに遠くない場所で時間があったので、ファミレスにでも行く?というと、
皆お腹も空いてないし、ちゃ―坊を車にひとりで置いていくのも忍びない、という。
(お前たち、誰がエサをやるかって順番巡ってケンカしてただろーが。うんこの始末するの嫌がって臭いのに気がつかないふりしてただろーが。)と思わないでもないが、近くに公園があったのでコンビニでサンドイッチや飲み物を買って時間を潰すことにした。
幸い天気がよくてポカポカと気持ちがいい。

キャットハウスをそばに置いてもそもそとサンドイッチを食べながら、まだ子猫だった頃の話しなんかをした。
ちゃ―坊はまるで眠っているようで、いつも自分の名前が出てくると尻尾をぱたん、とさせた、今にもぱたんとしそうだった。
耳をつまむと、迷惑そうにパタパタさせるような気がした。

息子たちがトイレに行ってる間に、長男はずっと泣いていた、次男は部屋に閉じこもって出てこなかった、と元夫が言っていた。私の前では二人とも泣き顔は見せなかった。

今度は迷うことなく時間より早く着いた。
厚紙でできた棺もどきの箱に収めると、たまらずに泣きながら皆で身体中を撫でさすった。
お花を添え、お線香をあげ、ふたが被せられて、窯に入れられる。
のぞき窓から点火したのが見えた。

焼きあがったお骨を見て「こんなに小さかったんだ」と思ったと、長男が後で言っていた。
老猫の割には頭の骨はしっかりと硬かった。
お尻のあたりには、腸の中に残っていた丸いうんこが2~3個形をとどめていた。

骨壷に納まったちゃ―坊を抱いて帰り、リビングに俄か拵えの祭壇をつくった。
今日はみんなでちゃ―坊を偲ぶ会をしよう、と元夫がいうので姑も交えて半年ぶりに食卓を囲んだ。
おすしを食べながら、いつも通りの顔に戻って息子たちのバカな話しに笑いながら楽しいひとときだった。
足元にはいつものようにちゃ―坊が丸くなっているような気がした。
勝手口のガラスのドアの向こうで、入れてくれといって、網戸をカリカリするような気がしてならなかった。

「またねー」とひとりでアパートに帰ってきたら、涙が出て止まらなくなった。

もう夫婦ではない私と元夫とどんどん大人になって行く息子たちと、ちゃ―坊を亡くしたという同じ悲しみをシェアして過ごした今日一日。
失ってしまった家族の時間を最後にちゃ―坊はプレゼントしてくれたような気がする。
これがちゃ―坊の恩返しだったのかもしれないなぁ。