tamaさんの翻訳。いつも有難うございます。

 

オリンピック後のラファのインタビュー

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平昌五輪の会場の最後の照明が消えた時、ネイサンとラファのゼロ時間に向かう旅が始まった。

 

元々普通人の何倍も圧縮した日常を過ごしているネイサンだが、それに更に荷重して限界ぎりぎりで生きた4年間だったろう。間近で見てきたミハルが『200%』と表現したとてつもなく密度の濃い時空。ジョニーが『冷たい胡瓜』と表した何事にも動じないクールな風貌の背後でどれほどの熱い炎が燃えたぎっていたのだろう。命を削ってひたすら駆け抜けた4年間だったと思う。

学業との両立に苦闘し、免疫力が落ちて毎冬酷いインフルエンザにかかっていた。病上がりでフラフラしながら、或いは吐きながらも学業でどうしても無理な試合以外は一切棄権せずに参戦していた。しかもただこなしているのではなかった。そういう困難な状況をも全てを学びに変えて恐るべき速度で成長し続けた。強調したいのはそれが一過性のものではなく継続的な現象だったことだ、その期間実に丸4年。一体どういうメンタリティーがあればそんなことが可能なのか凡人には想像もつかない。凡人に留まらず相当の一流選手にも理解が難しいレベルではなかろうか。アスリートには熱血で突っ走るタイプも合理的に取り組もうとするタイプもあるだろうが、二つを兼ね合わせる者は存外少ない気がする。灼熱の願望とそれを律し得る(胡瓜のように)怜悧な理性(自己管理力)の融合が生んだ奇跡というところか。

人は彼の事をスーパーヒューマンと評し、程なく毎試合圧勝で当然と感じるまでになった。今シーズンのスケアメで連勝記録が切れた時の人々の反応こそ、ネイサンのなしてきた事が如何に異常だったかの証明だ。3位、しかもFSでは6クワドに挑戦して5本着氷してるのに「ネイサンも落ち目?」なんて言われるとは、感覚が完全におかしい。

ともあれ今季、平昌後初めてこれまで鉄人の如くだったネイサンに疲労が見え始めたのは確かだった。股関節の故障、全米での珍しい転倒とエキシ欠場。優雅に湖面に浮かぶ白鳥も水面下では激しく水を搔いている。スーパーヒューマンであり続ける為のスーパーヒューマンな努力が人間である彼の肉体を蝕ばない筈はない。果して最後まで持ち堪えられるのか?そんな懸念がファンの心をよぎる中、迎えた五輪の公開練習では連日ごっついマスクをつけたままクワドを決めまくって衆目の度肝を抜いた。ミハルが言う200%の意味が窺い知れるクオリティ別格の練習風景(ラファが言ってるプロをノーミスで滑り切ったってのもマスク着用でやったんだよね?汗)一見無造作に跳びに跳んだクワドだが、その成功率は9割を優に越えていたそうな。黙々と通常通り行う練習がそのまま周囲への威嚇になっていた。鉄人振り健在、ファンはほっと胸をなでおろした。しかし同時にネイサンが纏っているピリピリした緊迫感に五輪は特別なんだと思い知らされる。

 

そして迎えたゼロ時間

 

一番の山場は個人戦のショートだが、団体戦は重要な第一関門だ。そこで後半4Lz+3Tというモンスター構成を完璧に滑り切った。誰か忘れたけど「ここでそれ(完璧演技)やっちゃって良いの?」と逆に心配していて、それが私的にはデジャヴだった。あの時大丈夫だったんだから今回も大丈夫と思えた。その如く個人戦では更に上をいく完成度で世界記録更新。その後のFSはもう祝宴の舞みたいなもんで(とは言え無論緊張はあったろうが)、この2本目の完璧なSPこそネイサンが待ちに待ったゼロ時間を越えた瞬間だったと思う。デジャヴと感じたのは4年前、平昌FSでの6クワドの演技に町田君が「選手生活で一度やれるかどうかの演技」みたいなことを言ってた(あやふやで御免)のに、その後の世選であっさり再現して点数も上回ったのを思い出したから。ネイサンはこの4年でとてつもなく成長したけど、根底は変わってないなあと思った(今も昔もモンスターアセアセ)。

この驚異の安定感の陰にどれほどの努力の蓄積があるのか、それ自体一つの物語になるだろう。しかし、どれだけ安定性を上げても何か一つ間違いがあれば全てが無に帰す。五輪が近づくにつれメンタル面が大変になっていったというのは容易に想像がつく、あ、私などには想像もつかない重圧がのしかかって来ただろうという想像がつくって意味ねあせる。コロナ予防も試合の一部でマスク常用は勿論あらゆることにもの凄い神経を使ってたに違いない。ヴィンセントの件があった後は尚更。ほんとインタのタイトルじゃないけどへとへとになって死ぬ寸前で踏みとどまる極限の闘いだったと思う。本番で久しぶりにマスクを取った顔が別人みたいにやつれていたのも、さもありなん。泣くうさぎ

決勝の勝利の舞いと共に一つのエポックが終わった。競技者としてのネイサンはあそこで燃え尽きた気がする。気持ち的にはフィギュアへの愛が益々高まっているとしても身体がもうついていかないのではないか。この4年間見えない五輪の魔物との闘いに明け暮れ酷使し続けた。世選に出たいという思いがあったのに叶わなかったのは、私には象徴的出来事のように思われた。ラファが引退して次に進むことを勧めているらしいのも、ネイサンの身体の状態を誰よりもよく知っているからだろう。まあ、もちろん分からないけどね。ゆっくり休んだら驚異の回復力でまた戦えるようになるかも知れない、なんせネイサンなので。もしそんな事態になったらもちろん凄く嬉しいが、それは続編=『復活編』として別個扱い。私のネイサン物語は一先ずここで完結だ。

本当に大変だったね、よくやったね、有難う、ご苦労様。

 

しょーまがネイサンの優勝を喜んでくれた件だが、私は彼のことを並外

れて聡明で洞察力に長けた、しかも無駄なことは一切言わない人と思ってるので「この4年間ネイサンを間近に見てきて」の部分に特に重みを感じてる。恐らくしょーまは誰よりも深いところでネイサンの闘ってきた過程を理解してくれてたんじゃないかと思うんだ。彼があのように評価してくれたことがとても嬉しいし、光栄だ。

彼はネイサンとは全く異なる生き様の選手、簡単に燃え尽きたりはしない。これからは若手が彼やネイサンが築いた基盤から出発して更に上を目指す時代なので、ベテランの彼が競合するのは簡単ではないだろう。しかししょーまにならきっと可能だ、ステファンもついてるしね。これからも今まで以上の大輪の花を咲かせてくれると信じてる。応援するよ。

 

 

北京での両演技は言うまでもなく永遠に記憶されるべきものだが、それとは別に私にとってネイサンのエッセンスが顕現した演技として21年ワールドのFSは忘れられない。五輪後再見して改めてそう感じた。この演技に彼の4年間が集約されていると。

 

 

クールな情熱

ゾーンに入ったネイサン
これを観てヤグディンは未来の五輪王者だと断定した。

 

絶対王者の称号に相応しいのはこの人だけだ

ネイサン以外いない、絶対に