台風一過
オリンピアンとそのファン達にも徐々に日常が戻りつつある。
・・という表現はもちろん妥当ではない。ロシアのウクライナ侵攻で日常的なあれこれなんて全て大したことではないと思い知らされている。速やかに解決策が見出され平和が戻りますように。
とは言いながらやはり時は過ぎてゆき、フィギュア界では次は世界選手権という運びになっている。暫くなりを潜めていたユヅリストさん達も元気を取り戻し再び姦しくなってきた。
私は国外居住者だがフィギュア情報はほぼ日本発で満たしている関係上、そこで五輪前後通して繰り広げられた4Aチャレンジ賛美祭りに少なからず衝撃を受けた。高難度技への挑戦など選手なら誰しも日々やっている事だろう。4Aだって公表しないだけで練習している選手は少なからずいると思う。普通は練習で一定レベル成功するようになった後にさていつ試合で使おうかという話になる、まだそこまでいってないから誰も口にしていないだけだ(いや、既に練習で成功していて試合でも何度か挑戦している選手さえ一人いる)。それが何故か羽生君だけ「まだ練習でも成功していないけど」五輪でチャレンジすると宣言し、マスコミはそれが前人未到の偉業であるかのように大騒ぎした。そして予想通りうまくいかなかった。練習で九割かた成功している技でも試合では失敗する事があるんだから当然だ。そんな無意味なチャレンジを何でそこまで賞賛するのか、どうしても理解できなかった。褒めるのは回り切って片足着氷してからでも遅くはないだろうに。金メダルにも勝る業績とまで言われてるのを聞くと、自分には何かバイアスが掛かっていて(羽生君好きじゃないのは事実だし)真実が見えてないんだろうかと不安になって来た。今回の4Aチャレンジは本当にそんなにも価値のある事だったんだろうか?
そんな折プルシェンコのコラムを読んだ。
これまで彼がネイサンを語る事ってあまりなかったように思う。でもちゃんと見ててくれたんだな、と分かる内容だ(てか、そりゃ見てるよね)
同様にずっと味方として擁護してきた羽生君のことも・・・やはりちゃんと見ていたんだなと。ここしばらく甘々緩々なメロドラマみたいな日本メディアにどっぷりだったので尚更シビアに感ぜられた。
先ず4Aは入れるべきではなかったと。入れずにトゥループ2本とサルコウ1本プラス3A2本きっちり決めて完璧な演技をすれば銅メダルは獲れたはずと。プルシェンコは明らかに無謀な4Aチャレンジに意義を感じてはいないし、ルッツとループが跳べない今の羽生に三連覇は難しいと思っていたのが分かる。4Aを外しても目指せるのは銀メダルまで。SPの失敗で銀の可能性も消え、FSでは4Aを捨てて銅メダルを目指すべきだったと言っている。
(羽生君どうせ怪我を言うならこのルッツやループが跳べなくなった古傷をこそアピールすべきでは?と思うんだけど、それは認めたくないのかしらん。)
遂にプルさんもイナゴアタック来そうな事言っちゃった訳だけど、まあ彼ならびくともしないだろう。そう言えばヤグディンやウルマノフも似たこと言ってたよね(もっとシビアな言い方で)。
これが日本(え、中国も?
)以外の世界の識者の認識だと思う。4Aも成功した際に大絶賛する準備はあるけど、チャレンジには「ああ、惜しかったね」以上の反応はないという。
プルさん当然本人にも4A回避のアドバイスは送っただろう。でも羽生君は聞かなかった。縁が切れた理由は知らないが、オーサーも4A強行に賛同してたとは思えず、それが袂を分かつ原因となった可能性は充分あると思う。例の穴事件について発言したハビエルも含め、心配して本当のことを言ってくれる人々を次々に退け、羽生君はどんどん孤立していっている。
そうして残ったのは、孤立してゆく様さえも『孤高』と絶賛する無条件に持ち上げてくれる人々だが、果たして彼らは本当に信頼に足るのだろうか。
五輪王者になったら満足できると思っていたが、なってみたらまだ足りない、だから二連覇してみたがそれでも足りないということで更に目指した三連覇。例え達成しても期待するような満足は得られなかっただろう。飽くことのない渇望のスパイラルだ。永遠に勝ち続けることなど誰にもできない。まだ若い今のうちに敗北を受け入れる過程を経験した方が良いと思う、それがどんなに耐えがたい事であろうとも。正直ソチで勝ってしまった事が悲劇の始まりという気がするのだが、遅まきながら今回の負け、表彰台に乗れなかったのは彼にとって良い結果だったと思っている。
北京での羽生君はいろんな意味で痛ましいの一語に尽きた。
メダリストそっちのけの歓待を受けて敗北の痛みを紛らわせていたけれど、その興奮が冷めた時、彼はどんな心境になるのだろうか。EXからはける時のめっちゃハイな様子、本当に危ういと思わされた。今が大事、メンタルちゃんと診てもらわないとダメだよ。
偶像に祭り上げられて幸せになれた者などいない。彼の地上への落下が出来る限りソフトであることを祈る。
お母さん大変なのかも知れないけど、頑張って。