先日、初回のレッスンだった生徒さんから、「そもそも音の高低、というものが、感覚としてわからない」というお悩みをお聞きしました。

そこで、まず、ピアノの1番下のドと1番上のドを目を閉じて聞いていただき、どちらが高いか低いか、を尋ねると、迷いなく低い、高いを答えられました。

ということは、耳で高低を認識できないわけではない、きちんと高低を聞き分けることができる、ということを理解していただきました。

その生徒さんは、知識として、こういう音が高いという、低いという、というところから判断しているが、感覚的な高い低いの判断ができない、と言っておられたのですが、それは訓練と慣れによって身についてくるものだと思います。

よく、簡単に正しい音程で歌えたりする人を見て、比較して、「自分には音感がない」「才能がない」と思い込んでしまっている方がいらっしゃいますが、音程良く歌える人は、どこかの段階で、訓練をした経験があるものです。

文字を読めるようになるのと同じで、何も訓練しなければ、「あ」と書いてあっても、どんな風に発音するのか、そもそも絵か文字なのかもわからないでしょう。子供の頃にこれは「あ」と読むんだよ、「い」と読むんだよ、と教わってきて、訓練してはじめて長い文章も読めるようになりますよね。

音も、こんな音を「ド」というんだ、「レ」というんだ、ということを一つ一つ感覚とともに覚えて、はじめて使えるようなります。

ですので、知識として、こういう音が高い低い、ということが認識できていれば、音程を取ることも簡単になっていくことをお伝えしました。

余談ですが、この方は、過去に、カラオケで同僚に「ひどい音痴だ」と言われた経験から、歌に対する自信をすっかり失われていたようです。そういう気持ちの面でのコンプレックスは、声に大きく作用します。

音階練習をしてもらいましたが、音をしっかり聞いてから声を出されると、ほとんど音程を間違われることはありませんでした。逆に、正しくしっかり出さなければ、と身構え過ぎると力んで違う音になってしまうご様子で、苦手意識を持ちすぎておられるのかもしれないと感じました。

この生徒さんは日常生活の中で、鼻歌を歌われることもよくあるご様子で、もしかするとご自身で思っている以上に歌がお好きなのかもしれません。

人は、歌を聞いて「音程が正確だ!」という部分に感動するわけではないと思うます。あまり音程にとらわれ過ぎるのは良くないかもしれないですね。